…は、初めて、彼氏というか男子というか財前くんのお部屋におじゃましてしまった…。もうずっと正座の状態から動けない。どきどき、どうしようすごい緊張する…。財前くんは今飲み物を取りに行ってるから、その間私は部屋にひとりきり。きょろ…と、部屋を見渡して、置いてある漫画だとか、貼ってあるポスター、そんなのを見ていた。
「カルピスあった」
がちゃりとドアを開けて、手にふたつのコップを持った財前くんが現われた。ていうかカルピス!カルピス!なんか可愛い!ん、と手渡されて、ありがとうって言って受けとった。財前くんは自分のコップを持って、ベッドに座る。
「……なんで正座。崩せや」
「へ、あ、ああうん!」
ぎくしゃくとしながら、足を崩す。うう、やばいよがちがちに緊張してる…。カルピスを飲みながら、ちらりと財前くんを見た。ワックスをつけてないのか、いつもより髪の毛がへたりとしてる。完全にオフモード。
「…あれ、財前くん、ピアス一個…」
「あー青いやつどっかいってん。落としたかな」
「ふーん…。…ピアスって、痛くない?」
ピアスがついてない穴を触る財前くんだけど、それ見てるこっちが痛そうだからやめてほしいな。
「別に痛ないけど」
「え、そうなん?」
「…なに、ピアスあけるん?」
「あけへんあけへん」
痛くないって言われても、私はあけないからね。ていうか穴って、ピアスとかつけてないとふさがるんだよね…。人体の再生能力。ごくごくとカルピスを飲み干して、私も財前くんの隣に座った。財前くんはマイペースにちびちびと飲んでいる。
「…私、財前くんに似合うピアス選んであげるわ」
「え、なに急に」
「そんで、それでいつでも私のこと思い出してね」
…あれちょっと、笑わないでよ。ここ笑うとこじゃないよ!声には出さずに、笑いをかみころす財前くん。少しむうっとしたけど、笑ってて、かっこいいから、まぁいいや。不覚にもその笑った顔にきゅんときた。うう、笑われてるのに!
「あー、せやな、選んでな」
「ばかにしとるやろ…」
「してへんわ。じゃあ、俺もなんか選んだる」
「え、ほんま!?」
まさかそう言ってくれるとは思ってなかったから、どうしよう、すごく嬉しい。財前くんセンスいいんだもん、惚れ直すよ。きっと。すっ、と、財前くんの手が伸びてきて、なに、とか言う間もなく、くしゃりと私の頭を撫でて、
「…それで俺のこと、いつでも思い出せよ」
なんて言うから、ああ、もう、なんでそんなにかっこいいのかな。惚れ直しちゃう。
100410