どくどく。鼓動が早い。胸のあたりがきゅーってする。ああ、どうしてこの人はこんなにも、
「大佐、」
「ん」
「コーヒー、ここ置いときますね」
「ああ」
短い返事をして、また大佐は書類とにらめっこ。こんなにもまじめに仕事をやっている大佐は珍しい。いや、別にいつも怠けてる訳じゃないけども。
ちらりと横顔を盗み見る。…かっこいいな。かっこいいよ。どんなあなたも好きなんだよ。
「…何か私の顔についてるのか?」
「え、あ…っ、い、いえ…」
「そうか」
や、やばいやばい。もう私も仕事しよう。急いで部屋から出ようと、扉に向かって歩く。ええと、今日は明後日までに仕上げないといけない書類を…
「待て」
「(びく)は、はい」
「戻るな。ここにいろ」
大佐がそう言うから、扉へ向いている体を大佐の方へ向けた。
「もうすぐで終わる」
「はい」
「…おいしい店を見つけてな。一緒に行かないか」
「は、…い」
「そのためにこうして仕事を早く終わらしてるんだ」
「……っ、はい」
ああ、どうしてこの人はこんなにも愛しいの。
2010117