歩く毒草図鑑だよね | ナノ



私は、白石が好きだけど、別に毒草とかが好きではないわけで。なのに白石はそんな私の気持ちにも気付かずに、毒草ばっかりたまにテニスの話。けど、好きだから、どうしようもないんだよなぁ。


「で、これは…」

「…毒草のことはもうええよ…」

「そんなん言うなや、俺はお前をハマらせたいねん」

「毒草に?」

「毒草に」

「や、それはないと思うんで大丈夫です」


そりゃ同じ趣味を持ってたら、今よりもっと、白石と仲良く話せると思うし、それはいいかもしれないけど、だからって毒草にはハマらないかな。残念。白石の頭も残念だ。せっかく、屋上で一緒にお昼を食べるぐらいの仲になったけど、毒草だけはいただけない。


「…俺、お前やったら毒草の素晴らしさを分かってくれる思たのに…」

「うんごめん変な期待すんな」


まったく、毒草の話になれば目が輝きだすんだから。あれなんで私こんな人好きなんだろう。


「ま、これからゆっくり毒草のこと分かってったらええわ」

「えー…」

「そんで、俺のことももっと分かってったらええから」

「え?」

「ん?」

「え、ちょ、今の…え?」

「え?なに?」


なに?はこっちだこの野郎!今の、さらっと言ったけど、なんか白石すごいこと言ったよね?もしかして私の聞き間違い?それだったら哀しすぎる。


「い、今の、どういう…」

「えーなにそれ、それ言わせるん?」


微笑みながらそう言うけど、そんなの、分かんないよ。言われなきゃ分からない。どきどきする。心臓が急に加速し始めた。白石、ほんとのこと、言ってよ。


「あんな、お前、俺のこと好きやん?」

「う、嘘言うな!」

「ほんまやろ?分かってんでー、俺は!」


え、え、私の気持ち、白石にばれてたの!?顔が熱い。そんな、白石、いつから分かってたんだろう。心臓が痛いほど鼓動する。緊張と、怖さと、ほんの少しの期待とで。そしたら白石は、まぁこれ知ったんは謙也から聞いてんけど。だって。お、忍足め!あとでしめる!やっぱり、仲が良いからって、忍足なんかに色々聞かなきゃよかった!


「…で、実は、」

「う、うん」

「俺もお前のこと、好きやから、」

「えっ、うっ、うん」

「もっと、俺のこと、分かってほしいから、」


その言葉を聞いたとたん、腕を引かれて白石の腕の中。ああ、白石の匂い、やばい、近い。顔が近い。いっぺんに私の頭のなかに情報が入ってきて、もう頭はパンク寸前。ぐるぐるする。


「だから、俺と付き合ってください」


白石の胸の鼓動が聞こえる。どくどくと速い。私だって異常なほどどきどきしてる。嬉しくても涙って出るんだなぁ。返事はもちろんおっけーに決まってて、白石の方をちらりと見れば、目があって、一緒に笑いあった。



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