「リンちゃん、ほんとにもう行くの?」
「うん。ごめんな」
リンちゃんが旅立つ日。それは、私達一族が生き残るために、賢者の石を探しに行く旅であって、リンちゃんは私達民のために、旅立つのだ。
「気をつけてね」
「ああ」
「けが、しないでね」
「うーんまぁ努力する」
ははっと笑って言うけれど、目は哀しそうね、リンちゃん。けがしないなんてむりよ。だって旅だもの。するに決まってる。なのに私がこんなこと言うのは、本当にリンちゃんが心配だから。
「…ほんとは私も行きたかった」
「そんなこと、」
「うん、分かってるよ。むりだって」
これ以上、リンちゃんに心配かけたくないんだけどなぁ。でも、どうしても、体は正直であって、涙がぽろぽろと出てきた。泣くなよ、泣かないって決めたのに、私。
「だから、私、」
「…もういい」
何かを言おうと、頑張って言葉を探したけれど、リンちゃんが私を抱き締めるから、何も考えられなくて、どきどきした。リンちゃん、リンちゃん、
「俺、お前のこと好きだ」
「えっ…」
「だから、待っとけよ」
俺が帰ってくるまで、待っとけ。
そんなこと言われなくても、ずっと、ずっと待ってるよリンちゃん。
100325