笑っていってらっしゃいを言う | ナノ



「リンちゃん、ほんとにもう行くの?」

「うん。ごめんな」


リンちゃんが旅立つ日。それは、私達一族が生き残るために、賢者の石を探しに行く旅であって、リンちゃんは私達民のために、旅立つのだ。


「気をつけてね」

「ああ」

「けが、しないでね」

「うーんまぁ努力する」


ははっと笑って言うけれど、目は哀しそうね、リンちゃん。けがしないなんてむりよ。だって旅だもの。するに決まってる。なのに私がこんなこと言うのは、本当にリンちゃんが心配だから。


「…ほんとは私も行きたかった」

「そんなこと、」

「うん、分かってるよ。むりだって」


これ以上、リンちゃんに心配かけたくないんだけどなぁ。でも、どうしても、体は正直であって、涙がぽろぽろと出てきた。泣くなよ、泣かないって決めたのに、私。


「だから、私、」

「…もういい」


何かを言おうと、頑張って言葉を探したけれど、リンちゃんが私を抱き締めるから、何も考えられなくて、どきどきした。リンちゃん、リンちゃん、


「俺、お前のこと好きだ」

「えっ…」

「だから、待っとけよ」


俺が帰ってくるまで、待っとけ。
そんなこと言われなくても、ずっと、ずっと待ってるよリンちゃん。



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