卒業式を前に | ナノ



今までありがとう。さよならだ。


「なぁ謙也、卒業寂しい?」

「んー、そりゃあな」

「ふーん、謙也でも寂しいんやね」

「ちょ、どういう意味やねん」


そう言いながらも笑う謙也の顔、なんか見てたら泣けてくる。行く高校も違うし、もうこうして一緒に登下校出来ないかもしれない。まぁ多分謙也のことだから、メールすればすぐに返事してくれると思うし、家だってそんなに遠くないんだし、会おうと思えば会えるけど。


「……謙也、」

「ん?なに?」

「あの、えっと…」


そんなこと、出来るか。


「…いややっぱなんもない」

「なんや気になんな…」

「もう一生気にしとけばええよ」

「え、ひど!」


こうして笑いあえるのも最後なの?笑いあって、話しあって、たまに見せる謙也のかっこいいところとか、それを見てきゅんってしたりとか、もう、もう最後なの?嫌だよ、私、卒業したくないよ。


「ほんまに、…最後なんかなぁ?」

「え?」

「謙也に会えるのも、最後なんかなぁ?」


涙が出てきたから、仕方ないから、泣いた。泣けてきたんだ。だって、謙也のこと、好きだもん。会えなくなるのは寂しいよ。


「な、何言うてんねん!呼べばすぐ会いに言ったるやん!」

「…うそ言うな」

「いやいやほんまやし!」


うそでもいいよ、私にはそれだけでもういいよ。やばい、今のことばが嬉しくて悲しくて、余計に涙出てきた。止まれ、止まれ、止まれ!ごしごしと袖で涙を拭ってたら、謙也に腕をつかまれた。何かと思えば今度は謙也の袖が私の涙を拭う。


「…頼むから泣かんといて」

「え、あ、」

「最後なんて言うな」


気がつけば謙也にぎゅうって苦しいほど強く抱き締められていた。謙也の泣きそうな声にこっちまで泣きそうになる。いや、もうすでに私は泣いているけども。


「…あんな、」

「うん」

「俺、実は、」

「、うん」

「…お、お前のこと、好きやってん」


私もだ、私も、好きで、すっごく好きで、ああ、どうしよう、また泣いた。ごめん、謙也、こればっかりは泣かずにいられないよ。今までありがとう、好きだよ、謙也。卒業してもよろしくね。



100315
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