私はまったくもって恋に臆病だ。私の青春時代はほぼ部活とバイトに費やしたし、そもそも恋愛というものに興味があまりなかった。そんな私が初恋に芽生えたのは高校三年生のときで、私は何も出来ずに終わった。バイト三昧の日々の高校生活、私は恋愛にあまり関与せずにいたから、どうしていいか分からなかった。そりゃ、たまには、この人格好いいなとか、そういうの思ったりもするけれど、思うだけで、口にはしなかった。過去に付き合ったことがある人数1人、しかもすぐに別れた。だから、恋の経験が少ない私は、いつでも恋というものが怖かった。
「ロイ先生、これ落としましたよ」
「ああこれはどうも」
同僚のロイ先生が落としたプリントを拾う。渡そうとしたけど、あいにくロイ先生の両手はノートとプリントでいっぱいだったので、渡そうにも渡せない。
「…あの、手伝いますね」
「すまない、ありがとう」
にこりと笑うロイ先生の顔、それを見たらいつも胸が痛くなる。それと同時に、恐怖が現われる。もし、この私の気持ちに気付いてるとして、ロイ先生にとってそれが迷惑なものならば、…なんて考えてしまって。ああ、もう、どうすればいいの。どうすればこの気持ちは楽になるの?泣きたくなる。
下校していく生徒たちに別れを言いながら、職員室について、ロイ先生の机の上にノートとプリントを置いた。そしたら、ロイ先生が、ついでにって、一緒に図書室の本の整理をしようと言ってきた。私はこのあと特に何もないし、急いで帰る必要もないので、承諾することにした。
「じゃあ、ここに置いてある本を棚に並べるだけなので」
「分かりました」
作者名を確認しながら、次々と並べていく。広い図書室には、本を置く音だけで、私たちは黙々と作業中。そしたら、いきなりロイ先生がその場を離れて椅子に座り込むから、どうしたのかと思ってかけよった。
「どうしたんですか?あと半分ですよ?」
「…今日が、何の日か知ってるか?」
「今日?今日は…えっと、2月14日ですよね」
「2月14日は?」
「バレンタイン」
そうだ、今日はバレンタインなのだ。学校でもちらほらとチョコが見えたけど、こんな日ぐらいはいいんじゃないかなって思って、何も言わなかった。
「君は誰かにあげたのか?」
「いや、あげてない…ですけど」
ほんとは、あなたにあげたかったけれど、私はとても臆病で。一応持ってきてはいるけどかばんの中。多分それも、結局は最後には私が食べるんだろうなと思いながら。
「…私は、君からのチョコがほしい」
「……え、」
まさか、そんな、そんなこと、言ったらだめだよ、期待してしまう。どくどくとなる心臓、胸がざわつく。なんか、なんで、やばいどうしよう涙出てきた。怖いよ。
「チョコレート会社の企てに、一緒に乗ろうじゃないか」
お願いです、私にもっと安心させる言葉をください。
100215 バレンタイン…(^O^)