「り、り、リンさ…、」
「なニ?」
「はな、離れてほしいんです、けど…」
お昼ご飯のシチューを食べている私の横に、ぴったりくっついて座るリンさん。触れている左半身から、ぞわぞわと鳥肌が立つ。私が男の人苦手だっていうの、知ってるくせに!ていうか、この人、今日で不法侵入何回目なの…!あとすごい食べづらい!
「俺にも食べさせてほしいナ」
「いや私は離れてと言ってるんですが…」
「お願いだヨ、今日は朝から食ってないんダ…」
そ、そんなこと知りません!…と、言いたいとこだけど、リンさん、私がそういうのに弱いって知ってるんだ。私の良心が痛むことを知ってて言う。ああ、なんてことなの。仕方なく、席を立ってリンさんの分のご飯を持ってこようとした。…けれど、
「ちょ、」
「いいかラ、座っテ」
ぐいっと袖をつかまれて、立ち上がろうとしていた腰は、そのまますとんと下ろされた。何がしたいのこの人。食べたいって言うから取ってきてあげようと思ったのに。
「そうじゃなくて…食べさせてほしいナ?」
「…食べさせてって」
「あーン」
…なっ、なんで、なんでそういうこと言えるの!私の顔がみるみる赤くなっていく。どうしよう、どうしたらいいのか、分からないよ。
「じっ、自分で食べてください」
「俺は食べさせてほしイ」
「…っ」
どうしてここで私の良心が痛むんだ!じっと私を見つめる視線、どくどくと早くなる心臓。私はリンさんと目が合ってから、どうにも離せない。なんで、なんだか、苦しい。胸が苦しい。そんなに見ないでよ。
「…わ、分かりまし、た…」
震える手でスプーンとお皿を持つ。お皿からシチューをすくって、リンさんを見た。また目が合った。とたんに私は胸がきゅーっとなった。なんで?どうして?男の人は苦手なはずなのに。そして、リンさんの口へスプーンを運ぶ。ぱくっ。食べた。
「うン、うまイ」
「……も、いい…?」
「ありがト」
お皿とスプーンを机に置いて、一息ついた。なんでこんなに私の心臓はばくばくいってるんだろう。スプーンを持つ。リンさんが口をつけたスプーン。なんだか恥かしくてそれ以上食べれそうにない。仕方ないからスプーンを置いて、パンを持った。
「…意識してル?」
「べっ…!別に、そんなのじゃ、」
「ふーン?」
にこにこ、いや、にやにやしながらリンはそう言った。…意識とか、するに決まってる。今のは誰だってすると思う。パンを小さくちぎって、食べようとした。そしたら、リンさんったら、その私の食べようとしたパンを横取りして食べた。私の腕をつかんで、ぱくりと、あ、あ、あ、
「な…っ、に、する…!」
「顔、真っ赤ダ」
「…リンさんのせいですっ!」
リンさんが私の頬を撫でた。びくっとなる私。何、するの。怖い。
「男嫌いは治らなくていイ」
「え…?」
「俺だけに慣れてくれれば、それでいいヨ」
ああ、今、心臓が、胸が、痛いくらい嬉しく思えた。
100207