目が覚めたときにはもう真っ暗だった。急いで教室を出て、階段を下りた。誰にもすれ違わない。やっぱり、誰もいないんだ。真っ暗な学校。不安になる。走って走って、靴箱に向かう。早く帰ろう。なんで私、学校で寝ちゃってんの。
「…………なんでおんの」
「別に」
靴箱に行くと、なぜか、ほんとになぜか財前がいた。財前は私の姿を見ると、腰をあげて立ち上がる。……も、もしかして、
「待っててくれた…?」
「別に」
さっきから別にしか答えない。え、まさか、ほんとに?ほんとのほんとに?ほんとに待っててくれたの?やばい、やばいよ、にやける。どうしよ、にやけちゃうよ。誰か、この私の気持ち悪い顔を止めて!
「きもい」
「ご、ごめん」
「……俺、帰るわ」
「ちょ、待って、私も帰るから」
ばたばたと急いで靴を履きかえる。行っちゃったかな、って思ったら、ちゃんと玄関の扉の少し先で待っててくれていた。なんだ、やっぱり、待っててくれたんだ。なんだかんだ言って、優しいんだから!外に出ると、冷たい風が吹いた。
「うあ、さむっ!」
「来るんやったらはよ来いや」
「ごめんごめん」
走って財前の隣りに並ぶ。うふふやっぱにやけが止まんない。止める方法なんて忘れた!手を握ってみると、とても冷たかった。この低血圧め!…いや靴箱で待ってたらそりゃ寒いよね。ごめん。心の中で謝った。その代わりに、私が温めてあげる!さっきよりも少し強く握ると、財前が私の手と一緒にぽっけに入れた。
「あー…めっちゃ寒い」
私の心はほっかほかだけどね!
100207