ガシャーン!という割れる音が部屋に響く。さっきまで数人が喋ったりしてたのに、今ので静かになってしまった。あ、あ、あ、
「あー!」
「え、今のなに」
急いで割れたカップの破片をしゃがんで拾う。人が寄ってきた。ちょ、そこ危ないですよ!
「おーこれまた派手にやったなぁ」
「ハハハハボック少尉…!ごめんなさいー!」
笑いながら言ってますけど、普通怒るとこですよ!…あ、やっぱり怒られるのは嫌です。大きな破片は大体拾えたけど、細かいのが拾えてない。ど、どうしよ、ほうきとちりとりはどこー!?
その時べしんと頭を叩かれた。いい音が鳴ったとか、そんなことはどうでもいい、こ、これはもしかして、もしかすると、
「何やっとるんだね君は…!」
「あぎゃー!大佐!」
さっきまで不在だった大佐、いつのまに戻ってきたのやら!せっかく大佐には怒られないとか思ってたのに、ああ、神様は私に味方してくれないのね。
「す、すみません割っちゃってすみませ、」
「素手で破片を拾うんじゃない!」
「は、」
ぽかん。拍子抜け。割ったことで怒られると思ったのに、そんなこと?大佐は私の手をとって、怪我はないかと言ってきた。え、え、な、ないですけど……。
「そうか、ならいい」
「…え、怒らないんですか?」
「過ぎたことは仕方ない」
よ、よかったー!怒られるかと思った!周りで大佐はこいつに甘過ぎとか言ってるブレダ少尉は置いといて、ほうきとちりとりを探してこようと立ち上がった。歩きだそうとしでも、ぐい、腕を引かれて動かない。
「大佐?私、今からほうきとちりとりを…」
「…これからはこういうことに気をつけたまえ」
「え?あ、はい!すみません」
「そうじゃない、君に傷がついたらどうする」
「…いや別にいいんじゃないでしょうか」
そう言うと大佐にため息を吐かれた。え、なんで?
「せっかく可愛い君が傷モノになってはだめだろう」
「…ば、ばかなこと言わないでくださいよ!」
大佐の手を振り払って部屋を出る。ツカツカツカ。靴のヒールの音が廊下に響く。頬を触った。熱い。顔が赤い。もう、カップが割れたのも、私の顔が赤いのも、ぜんぶ大佐のせいだ!
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