はあ、いつになればこの書類の山は片付くのか。今にも雪崩が起きそうな雰囲気をかもしだしている紙の山を見上げ、ため息をひとつ。早く片付けて家に帰ってお風呂入って寝たいのに。
「はい、コーヒーよ」
「あ、ありがとうございますホークアイ中尉」
中尉からコーヒーを受け取って、ずずずとすする。
ちらりと大佐の方を見た。…大佐ももう限界みたいでペンを握りしめたまま顔をうつぶせていた。もちろん他のみんなももうとっくに限界を越えている。
「私、もうそろそろ帰るわね」
「え、中尉、仕事もう終わったんですか?」
「終わったわ。じゃあ、あと頑張ってね」
ホークアイ中尉はそれだけを言い残すと、ばたんと扉を閉めて帰っていった。……さすがホークアイ中尉、仕事が早い。
ふと、周りを見れば、男。男。男。
「うああむさくるしい…」
ほんと早く帰りたい。とりあえず今終わってる分の書類には大佐のはんこがいるな。
「大佐ー」
「…………」
「大佐ってば」
「………………」
「……返事がない。ただの屍のようだ」
「…勝手に殺すんじゃない……」
「あ、生きてたんですね。じゃあこれはんこお願いします」
大佐はぱらぱらと内容をチェックすると、はんこを押していく。ああもう、仕事、今日中に終わるのかな。
ぱし、と手をとられた。少し眠くてぼーっとしていたから、びっくりした。
「…なんでしょうか、大佐」
「……君が帰ったら、男だらけになってしまう」
「そうですね、手を離してください」
つかまれた私の手に、大佐が、ちゅっとキスを落とした。……な、な、な、
「今夜は帰さないよ…色んな意味で」
「…ば、ばかなこと言わないでさっさと仕事してください」
………不覚にもときめいてしまった。
20100124