嬉し泣き | ナノ







たまったばかりの熱いお風呂につかって、
この世の極楽ってこういうことを云うんだ、なんて、幸せな気分に浸ってたら、


何の前触れもなく風呂場のドアが開いて、



「……ちょ…っ!?」


「ああ」


「ああ、じゃない」


「何か問題でも?」


「も、問題しかないよ、何してんの」


「いやなに、愛しい恋人と一緒に風呂場で盛り上がるのも「意味わかんない!」



慌てて前を隠そうとしたのに、タオルが手近になかった



そうこうしてるうちにロイは、ちゃっかりお湯につかっていて、



「う、わ」


「…いやあ、濡れた君もいいな」



「は、は、は、離れてよ」



「寂しいじゃないか」



恋人になって、あたしはロイの裸を見たことがあるし、ロイもあたしの裸を見たことがある
あるけど、でも、こんな明るい場所では、ないわけで



「名前」


「………」


「こっちを向きなさい」



「………や」


「や、じゃない」


「や!」


「……強情だな」



ちゃぷん、
水面が揺れ、て、


「やっ…な、何…ちょっ、ちょっとちょっとちょっと何してんの!」


「……やってみたかったんだ、君を後ろから抱き締めながらお湯につかるの」


「倒置法で云われても」



「いいにおい」



ぎゅう、と抱き締められて、
ロイの身体が背中に当たる感触にどきり、



急に意識してしまう
だ、だってロイに、こんなにくっついて、て、…落ち着いていられるわけが、ないじゃん






「やわらかいな」


「…太ったって意味?」



「女性らしくていい、という意味なんだが」




胸のすぐ下とお腹のあたりに回された腕、
心臓の筋肉は自分じゃコントロールできない不随意筋だ
迷惑な話


どきどきしてるのばれちゃうじゃん、



「名前…」


「な、なに」




ちゅっ



「ぎゃっ」



うなじにキスされた



身じろぎしても、がっちり抱き締められていて動、け、ない、



「ちょっとロイまじで離れ…ひゃっ」


「可愛い声も出せるじゃないか」


「出な……〜〜〜〜〜っ…や、やめ……ぅ…」



べろり、と肩口を舐められて、思わず、ひくん、と反応したのを、目ざといロイは見逃さない、




向かい合わせにされて、
正面から抱き締められて、




ちゃぷん、と揺れた水面にも、低いロイの声にも、
変に、胃のあたりが、きゅんきゅんする


病院行った方がいいかもしんない、こんなに胸が苦しいんだもん、



きっと何かの病気なんだ







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