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類は友を呼ぶというように似た者同士が友達になるのはわかる。だからこれからできるであろう好きな人も自分と似たような者なのだと考えていた。しかし理想と現実は違うとはよく言ったもので、実際に好きになった彼は自分とは似ても似つかない寧ろ正反対の性格だった。
五感を頼りにしているあたしとは違って彼は機械等の科学的なものを信用する。いつだったか幽霊騒ぎがあった時にあたしは祟りだと主張したが彼は全て科学的問題だと言い張り喧嘩になったな。もう随分と懐かしい。
「最初はありえないって思ってたのになー」
「何の話?」
「人を好きになるのに理由はないって話」
「もしかして僕のこと?」
「そうよデントのこと」
本当にこれまでいろいろなことがあった。元々性格が反対なので意見も度々食い違ったしその分言い合いもした。それでも何度も繰り返している内に相手の考えも尊重できるようになってきて、そしたらいつの間にか好きになっていて。彼が持つ自分にはないものに尊敬するようにもなった。成長したなぁあたし。
「僕もまさかアイリスを好きになるなんて思ってなかったよ」
「やっぱりみんな最初はそんなものよねー」
「でも、運命だったんだって思ってるよ」
出会った時からお互い好きになる運命だった。彼の口から予想だにしなかったロマンチックな台詞に顔が熱くなる。デントも非科学的なことを言うようになったのね。
きみとわたしの間にある、不透明な空間
20120412 / Grazie