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四天王という役職も存外退屈なものだ。チャンピオンリーグの守護という仕事に特に不満はないが、何分挑戦者が少ない。リーグに辿り着くまでにまず各々の地方にいる8人のジムリーダーに勝利しなければならないし、その後に待ち受ける屈強なポケモン揃いのチャンピオンロードを越えなければならない。チャンピオンになると目標高いトレーナーも途中で挫折する人が少なくない。挑戦者は多くて週に2人か。想像していた四天王も暇なものだ。
「暇ですねぇギーマさん」
「そうだな、こうも挑戦者が少ないと暇で仕方ない」
「何か挑戦者を増やすアイデアとかないですか?」
「思いつかないな」
いつもは暇さえあれば、というかいつも暇だが部屋で趣味の小説を書いてるのだが、今日はネタに詰まりネタ探しというよりは気分転換にギーマの部屋に訪れていた。シキミが部屋に来ることはよくあることなのでギーマはすんなりと招き入れた。何故カトレアやレンブなど他の四天王ではなく彼なのかというと、カトレアは時間の大半を睡眠に取っているし、レンブは修行したりアデクさんに付いていったりで忙しいからだ。失礼だと思われるかもしれないがギーマは特に普段から何かしらしている訳ではないことを知っているので、こうしてたまにお喋りの相手になってもらっている。
「暇潰しにギャンブルでもやってみるかい?」
「え、嫌ですよアタシそういう賭事嫌いなんです」
「別にお金を取ったりなんかしないさ。ただの遊びだぜ」
「それならいいんですが…」
何も賭けない遊びをギャンブルと果たして呼んでいいのか。単純な遊戯としてルーレット等には興味があったのでシキミはギーマの提案に乗る。しかし改めて見回すとまるでカジノの中にいるかのように錯覚させる部屋だ。あちこちにそれらしい道具であろうものたちが置かれ彼の本業がギャンブラーであると再認識する。
「じゃあまずはこれ、ルーレットだ。ルールはわかるか?」
「なんとなく。球がどこに止まるかを予想するんですよね」
「そう」
全くの素人なので考えることもせず適当に場所を決めると、ギーマはディーラーのような見事な手捌きで早速回し始めた。カラカラと球が転がる音だけが部屋に響く。別に外れても何も取られることはないので心配はしていないが、こうしてみると少し緊張する。プレッシャーには弱い方なのでとてもじゃないがやはり自分にはギャンブルなど出来ない。
「黒の35。隣だったな」
「あー惜しい分少し悔しいです」
「続けてやるかい?」
「いえ、他のやつをやってみたいです」
トランプ等を使うテーブルゲーム、スロット等のゲームマシン。ギーマに出会わなければこのようなものに触れる機会すら無かっただろう。好きではないが、新鮮だからこそ好奇心がそそられる。今度もし彼がギャンブラーとして出かけることがあれば付いて行ってみようか。本物のカジノというものをこの目で見てみたいし、四天王ではない彼の姿にも興味が湧いた。小説のネタに使えそうだ。
何処かに落ちていませんか
20120228