ゲームネタクエストBBS


依頼者:名前
場所:グレースヒルズ
私、ある事で悩んでるんです。ここでは言えませんが来てくれたらお話します。
出来れば男の人がいいかな…
グレースヒルズの噴水前で待ってます。


「君かい?名前っていうのは」


ぱしゃぱしゃと音を立てながら流れる噴水の水をぼんやりと眺める私の耳に聞き覚えの無い声が飛び込む。声のした方向へと顔を向けると、サラサラとした長い髪を高い位置で一つに纏めた男の人が私を見ていた。(でも…えっ、露出狂…!?)


「名前は私ですけど…えっ誰」

「クエストBBSに書き込んだだろう?グレースヒルズの噴水に来いってさ」

「えっ、あ!(どひゃあああすごいイケメンさんが来ちゃったどうしよう!)」

「わざわざ来てあげたんだ。言いなよ、その悩みっていうのを」

「えっ…あー、大丈夫です!もう解決しました!じゃ、私はこれで!」

「美しくない…」

「えっ、は?」

「この僕を呼び出しておいて帰るだって?美しくない!うつ…もがっ」

「わかりました!わかりましたから大声で叫ぶのやめてください!ただでさえ目立つ格好してるんですから!!」


名前も知らぬ露出狂のお兄さんがよくわからない事を叫びだした事で周りの視線に耐えられなくなった私はお兄さんの腕を掴んで近くにあったカフェへと引きずり込んだ。カフェの一番奥の席、数時間でもそこに居れば忘れられてしまうのではないかと思うほどにひっそりとした人目の少ない席に腰を下ろした私の目の前にはカフェオレ。お兄さんの前にはブラックコーヒーが置かれそれぞれ香ばしい匂いの湯気がゆらゆらと揺れている。


「………」

「………」

「………」

「……あの」

「なんだい」

「誰にも言いません?」

「もちろんさ。依頼者の君がそう願うのなら」

「………」

「………」


なかなか話し出そうとしない私に痺れを切らしたのか、お兄さんは長い睫に縁取られた瞼を閉じてため息を一つ吐くと少し冷めたコーヒーを口に含んだ。俯かせていた顔を少し上げてちらりとお兄さんを見るとバイオレットの強い眼差しが一つ、こちらも見ていた。どうしようも無い気持ちになった私は恐る恐る口を開く。搾り出した声は自分でも驚くほどに小さいものだった


「私、不感症なん、です…」

「…は?」

「ちょ、恥ずかしいんで何回も言わせないで下さいよ」

「不感症ねぇ。で、どうしてほしいんだい?」

「え?」

「君の悩みはわかった。それで、どうしてほしいんだい?」

「あー…ん、えっと…そうですよねぇ…こんな事言われてもどうする事もできませんよね。はは、すみません…」


バカだ。確かに初対面で「不感症なんです!」なんて言われてもどうする事も出来ない。それくらい少し考えればわかる事なのに…お兄さんもわざわざ来てくれたのに申し訳ない事しちゃったな。


「美しくない…」


今度は何が美しくないんだ。カフェオレが入ったカップに向けていた視線をお兄さんに向ければ、少し眉を下げて複雑そうな顔をしていた。


「美しくないな。すごく悲しそうな顔をしている。」

「何がですか?」

「君だよ」

「私、ですか?」


私が美しくない。なるほど遠回りにブサイクと言われたわけか。もう笑うしか…


「行こう」

「へ?何処、に…うわぁ!」


お兄さんが席を立ったと思うと腕を掴んで引っ張られ私は半ば引きずられるようにしてカフェを出た。引っ張られるがままに付いて行く。私はわけがわからないまま前を行くお兄さんの揺れるポニーテールと背中を見つめた。







「…………なぜ」


紫やピンク、可愛らしい色で統一された広い室内。


「………どうして」


部屋のほぼ中央に位置する場所に置かれた大きなベッドには真新しく綺麗なシーツがかぶさっている。


「………こうなった…」


今振り向けばガラスの扉を隔ててお兄さんがシャワーを浴びている。そう、私はなぜかラブホテルに連れてこられた。混乱しすぎて記憶が曖昧だがバスローブを着ているという事は私も既にシャワーを浴びたのであろう。い、いつの間に…ガチャリ、色々な疑問が脳内を駆け巡り混乱が増加している私の耳に混乱の原因であるお兄さんがシャワールームのドアを開ける音が聞こえた。


「あわわわ…あの、お兄さ、わっわた、私帰ります!すみませ、」

「……帰さない」


再び腕を掴まれてバイオレットの鋭い瞳が私を見つめる。吸い込まれそうなほどに綺麗なその瞳には情けない顔をした私が映りこんでいた。吐息が聞こえるほどの距離にいるお兄さんからはシャワー直後のいい匂いがした。


「あの、お兄さ、」

「神谷コウスケ」

「え?」

「僕の名前だ」

「コウスケ、さん…あの、腕放して下さ、」

「帰さないって言っただろう?」


視界が暗くなると同時にコウスケさんの香りが強くなる。唇にふにゅりと押し付けられた暖かい感触とバスローブから覗く私の鎖骨に触れたコウスケさんの長い髪で現実に引き戻された。なんて顔をしているんだい、そう言いながら笑ったコウスケさんは色っぽい表情に私は何も言えなくなって。流されてしまったのだ。


「不感症…って事は触られてもなんとも思わないのかい?」

「なんとも思わないっていうか…気持ちいいとかそういうのは無くて、触られてむずむずする感じ…です」


コウスケさんの綺麗な指が私の乳房に食い込む。つつ、と指が曲線をなぞって突起を掠める、が得に何も感じない。足首を掴まれたかと思えばぐいっと持ち上げられてその足はコウスケさんの肩にかかる。なんという体制だ。不感症とはいえ羞恥心はもちろんある。コウスケさんの眼下に自分の性器が晒されている。考えただけどおかしくなりそうだ。初対面なのに。初対面なのに!


「コ、コウスケさ…!恥ずかしい!」

「大丈夫、僕に任せて」


何が大丈夫なのか説明してほしい。私の心臓は全然大丈夫じゃない。コウスケさんは人差し指に唾液を絡ませるとゆっくりと私の中へと差し込んだ。下半身にちょっとした圧迫感がある。ただそれだけ。指に絡んだ唾液が潤滑油の代わりになってくちゅりと水っぽい音が聞こえる。指を抜いて薄い皮に覆われた突起を露出させるとコウスケさんはおもむろに吸い付く。ザラリとした舌で撫でられると、なんとも言えない感覚になった。


「ふぅん…ほんとうに何も感じないみたいだね」

「あの、何かすみません…」

「謝る事は無いさ。これで反応しないとなると残るは一つか…」

「え、あの もしかして、その」


コウスケさんはベッドの横のサイドボードに置いてあったコンドームを手に取り口で封をあけると自身に取り付けた。ローションを少量かけるとぴたりと入り口に宛がわれる。おいそれはマズイんじゃねぇのか


「ちょ、待って、あの…!う、ぐ!」


苦しい。膣内を押し広げて熱の塊が私の中に入り込んでくる。呼吸がしずらい。苦しい。


「痛いかい?」

「はっ…あ、痛くない、けどっ…くるし、」

「気持ちよくはないかい?」

「んん、ごめんなさい…っ」

「動くよ」


ずちゅり、ローションの音と一緒に熱の塊が私の中を動く生々しい感覚。快感は無かった。でも何かを探すような動きの熱がその部分を掠めた瞬間に下半身にきゅんとした感覚が走った。


「んっ…」

「何か感じたかい?」

「今、ちょっと気持ちよかったかも、です…」

「ここか…?」

「あっ、ん…、そこかも…」

「なるほどね…きっと今までいい相手に出会えなかっただけさ。僕が快感を教えてあげるよ。」


ニヤリ、悪役のような笑みを浮かべたコウスケさんは私の腰を掴むとそこを目掛けて強く腰を打ちつけた。その瞬間、体全身、つま先まで甘い電気が走ったような感覚に覆われてぞくりと皮膚が粟立った。


「やっ…何、これっ…」

「それが快感だよ。どうだい?」

「ん、気持ちいいっ…気持ちいいよ。コウスケさんっ…!」

「そう、よかった」


先ほどとは違う柔らかい笑みを浮かべたコウスケさんは猛攻をかけるかのようにガツンガツンと腰を打ち付けてくる。容赦という言葉をまるで知らない。初めての感覚に戸惑う事しか出来ない私はガタガタと震える手でシーツを握り締める事しか出来ない。両方の目からは涙がボロボロ溢れてコウスケさんの顔が歪んで見える。ろくに言葉も紡げず荒い呼吸を繰り返すだけの口端からはだらしなく唾液がこぼれた。


「こ、しゅけ、さ…っん、あ、」

「美しい…今の君は最高に美しいよ、名前…」

「ん、あッ、も…おかひく、なりゅ、う…!」

「そう、それが快感だよ、覚えておくといい」

「覚えたっ、覚えたかりゃぁ…!もぉ、らめぇ!」


嬉しそうに笑うコウスケさんは私の目尻に口付けて涙を掬った後、唇を重ねた。涙の味は無く不思議と甘かった。ぎゅう、私はコウスケさんの背中に爪を立ててしがみ付いた。コウスケさんの顔が少し歪んで腰の動きが一瞬激しくなると、薄いコンドーム越しに熱を感じた。
私がシャワーを浴びて出るとコウスケさんは既に身なりを整えてベッドの縁に腰掛けていた。正直何喋ればいいのか全くわからない。むしろ無言のままこの場を去りたい。でもお礼、しなきゃ…


「あの…」

「なんだい?」

「お礼、なんですけど」


バッグの中を漁ってクレジットそ手渡そうとするとコウスケさんの手がそれを阻止する。


「そんなものはいらないよ」

「え、でも…」

「そうだね…名前が僕の彼女になってくれるなら、ね」


もう一度優しそうに笑ったコウスケさんの顔があまりにも綺麗で、気恥ずかしくなった私は目線を逸らし小さく頷く事しか出来なかった





11.12.02







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