※男主


けたたましく鳴り響くスカイブルーの携帯を手にこの部屋を出ていったのは数十分前。相手が誰かは知らないけど、ディスプレイに表示された名前を見て嫌そうな顔をしていた。そして、部屋を出ていったいつもの凛とした顔とは真逆にな泣きそうにも見える顔でこの部屋に戻って来たのはたった今。噛みしめられた形の良い唇は歪んでいる。浅く食い込んだ歯には赤が滲んで、握り締められた携帯はミシリと悲鳴を上げている。玲名は力なく俺の名前をぽつりと呟いた。


「名前………」

「どうしたの?座りなよ。」

「アイツが、日本代表に、選ばれた、ん、だ…。私は、女、だから、世界の舞台には、立てない、のにっ…アイツは…アイツはっ…!」


ぱすん、玲名の右手に作られた握りこぶしは弱々しく俺の胸を叩くとそのまま強く服を握り締めた。アイツっていうのが誰かはわからないけど、知らない相手にもやっとした感情が芽生えた。きっとこれは俺の中の奥底にある汚いどろどろとした感情なのだろう。気の利いた言葉も見つからずに俺はただゆっくりと玲名の柔らかな髪の上で手を往復させる事しか出来ない。俺の肩口に顔を埋めたまま少しずつ言葉を洩らす玲名は小さくて弱々しい。


「私は、サッカーが好きだ。大好きだ。私も世界の舞台に立ちたい。でも、私は女だから、立てない。女になんて、生まれたくなかっ…」

「それ以上は言っちゃダメ。俺怒るよ?俺は玲名が女で生まれてきてくれてよかったよ。玲名と会って、仲良くなって、手繋いで、キスして、セックスもしたでしょ?玲名が女じゃなかったら俺達こんな風に一緒に居られなかったかもよ。」

「…それでも、私は、」

「女に生まれたくなかった?」

「………お前に会えたから、女でよかった…」


恥ずかしそうに逸らされた顔は真っ赤に染まって一向にこっちを向いてくれない。こういう所が乙女でかわいいんだよね、玲名は。さっきみたいな暗い表情もそこにはなくていつもの玲名の顔だった。


「おい、名前、抱け」

『はい!?』


ぎゅう、玲名の腕が両脇の下に入り込んで背中でぎゅっと結ばれる。ああ、そういう抱くね…。


「寂しかったのかもしれない。一緒にサッカーをやっていた奴が世界という私の知らない大舞台に立つ事が。だから、寂しくないように私をずっと抱き締めていてくれ。」

「うん、それはこらから先、ずっとずっと俺だけの役目。」

「ああ、もちろんだ」



11,02,24








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