柔らかな枕に頬を擦り寄せるように顔を埋めて瞼を落とせば私の視界は黒で塗り潰された。事を終えた直後の何も纏ってない身体に生るぬいシーツがまとわりつく。事後の怠さに身体を動かせぬままサイドボードの写真立てをぼんやりと眺めれば写真立ての中の京介は相変わらずの無愛想に写って、その顔には不釣り合いなピースサインをこちらに向けている。その横に写る私はとても楽しそうに笑っていて見ているこちらがなんだか恥ずかしい。
どうしようもない眠気が瞼をぐぐっと引き下げる。油断をすれば今すぐにでも夢の中へと落ちそうだ。寝てはいけない理由などないのだけれど今はなんだか眠るのが惜しい。私の背後でシーツの擦れる音がした。音と同時に腰に回された腕は先ほどまでお互いの名前を呼び合い、求めあった京介の腕。もぞもぞと寝返りを打って京介に向き直れば、眠そうに細めた黄金色の瞳がぼんやりと私を見つめていた。


「寝ないのか?」

「うん。なんか、今寝たらもったいない気がして。」

「…なんだそれ」


バカだな、そう言いたげにクスリと弧を描いた薄い唇に吸い寄せられるように唇を重ねた。規則的な時計の秒針の揺れる音だけが響く小さな部屋にちゅ、と小さなリップノイズが重なって響いた。甘い。キュンと締め付けられた心臓から麻薬のようにじわじわと身体全体に広がるくすぐったくてもどかしい感覚。満たされていく。私の中に京介が広がっていく。


「何笑ってんだよ」

「幸せ、だなぁって」

「へぇ…」

「京介はサッカーしてる時が一番幸せかもしれないけど私は京介と一緒に居る時が何よりも幸せ。」

「……は、俺だってお前と居る時が一番に決まってんだろ。ンなもんと比べんな」


小さく鼻で笑った京介は、すぐに優しい顔になって私の頬に手を滑らせた。手を滑らせた後の頬にキス。唇の端にキス。鼻の先に、瞼に、額にキス。幸せだ、そう思えば無意識に涙が零れた。苦笑した京介は舌で優しく私の目尻を拭う。


「泣くほど幸せか?」

「ん…すごく幸せ…」

「そうか。」


照れ臭そうに、嬉しそうに笑った京介の顔に私の心はとろけそうだ。京介がベッドから上半身を起こせばベッドのスプリングがギシリと音を立てる。起こした上半身で私に覆い被さっては首筋に顔を埋める。首に柔らかい唇が触れて甘い甘い、幸せな痛みが私を襲う。



12.07.11

企画参加させていただきました。Amore!









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