「いたっ」


午前の練習が終わって昼食を食べて、のんびりした空気に包まれながら部屋で本を読んでいた俺の頬に鈍い痛みが襲ってきた。本に集中しすぎてて全く気が付かなかったけれど、いつの間にか俺の隣には名前さんが居てにんまりと笑っていた。ぺろりと舌なめずりをした仕草でなんとなく分かったけど、もしかして俺、噛み付かれた?いつまでもぽかんとした顔の俺を見た名前さんは嬉しそうにびっくりした?と問いかけてきた。名前さんは綱海さんと同じ三年生なのに、その時は俺よりも年下に見えるほど無邪気な笑い方だった。


「びっくりしましたよ…いつから居たんですか?」

「五分くらい前から。勇気ってば本に集中して全然気付かないんだもん。」

「それは俺が悪かったですけどいきなり噛み付かなくても…」

「声かけるよりその方が面白いかなって」

「心臓に悪いですから…」

「勇気のほっぺすごい柔らかかった!」


にぱっと笑った名前さんは何を思ったのか俺に襲い掛かってきた。不意打ちの襲撃に俺は反応できず名前さんごとベッドにダイブ。手に持っていた本は、バサっと音を立てて床に放り出された。ページとか折れてなければいいけど。がぷり。「いたぁ!」のんきに考えてると頬に二度目の鈍い痛み。痛いと思う暇も無く三度目の奇襲。傍から見れば名前さんが俺にキスしてるように見えるんだろうけど、俺は今噛み付かれている。


「名前さん!何回噛み付くんですか!」

「気が済むまでー」

「き、気が済むまでって…ちょ、やめ…」


俺の言葉に耳も貸さずにがぷりがぷりと頬に噛み付く。かわいいけど…い、痛い!最初のうちは我慢してたけどそろそろ限界だ。それでも名前さんの噛み付きが収まる気配は無い。がぷ、名前さんが噛み付いた瞬間に思い切り肩を掴んで押し倒し返す。数分前に初めて噛み付かれた俺と同じように、ぽかんとした表情の名前さん。突然の事態に唇は半開きのままで、その唇は美味しそうに塗れてる。


「名前さんの今の顔、すごくかわいいですよ。」

「ばか!勇気!痛い!」

「痛くしてるんですよ」


ぷくっと頬を膨らまして拗ねてる名前さんの頬を突付いて空気を抜くと、乱暴に俺の指に噛み付いた。全く、躾の出来てないペットですね。こんな風に育てた覚えは無いんですけど。噛み付かれたままの状態で爪を立ててガリっと舌を引っかけば名前さんはびくんと体を震わせて俺の指を離した。指にはべっとりと唾液が付いていて、それを見せ付けるように舐め取る。名前さんは恥ずかしそうに頬を染めて俺に抵抗しようと腕を振り上げた。その腕を受け止めて笑ってみせると名前さんの顔は不安そうに歪んだ。


「今の俺は、いつもみたいに優しくないですよ」


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S向居覚醒って難しいですね。
ていうか自分で優しいとか言わないだろJK

11.03.25









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