最近ボクゥの家にね、かわいらしい同居人が出来たんよ。なんで同居人が出来たかって?雨の日に公園に落ちとったから拾ってあげたんよ。ボクゥかて人の子やからちょっとした良心くらいはあるよ。土砂降りの雨の中公園に居らすのはかわいそうやから、ボクが拾ったったんよ。小さい小さい体でベンチの上に座って震えとった。せやからボクは自分のさしとった傘を傾けてあげたんや。そしたらゆっくり顔を上げてこっちを見たんよ。次第に大きく見開かれたく目ェは恐怖がゆらゆらしとった。こぉんな雨の中やもんなぁ。そら怖かったやろ。でも大丈夫やで、キミの側にはボクがおったるから。
いやいやと抵抗しながらボクに手を引かれて引きずられるように付いてきたのを押しこむように家に入れて冷えきった身体をお風呂で温めたった。湯船に浸かっているあいだも、ボクに身体を洗われているあいだも、くすんくすんと小さな声で泣いとった。お腹すいてるんかなぁ。ボクは料理なんてめんどくさい事は嫌いやけど、その時はなんとなァく気分で作ったった。何が食べたいか聞いても頑なにいらない、の単語だけを繰り返す。めんどくさい子ォやなぁって思ったけど、ボクは優しいから作ったったよ。そういえばいつだったか、ユキちゃんが女の子はオムライスが好きなんやで、なんて言ってたのを思い出してボクは冷蔵庫にある材料でオムライスを作った。タオルを頭にかぶったまま膝を抱えて部屋の隅っこで小さくなるその子はボクによお似とると思った。コトリと目の前に置かれたオムライスを食べようとしないので腹が立ってスプーンですくったオムライスを無理やり口に詰め込むと、止まっていた涙が再びぽろりとこぼれた。それでもオムライスを吐き出すことはなくゆっくりと咀嚼して喉に流し込んだ。ケチャップが付いた口元を乱暴に拭いてやるとぐに、と頬が歪んでケチャップが伸びた。まるでソレは口元に血が付いとるようやった。長い時間をかけて食べさせたオムライスは皿の上からなくなって、うちに連れてきた時よりかはほんの少し、微かに顔つきが警戒心を解いているようにも見えた。
ボクはソファに座って言葉を口にする事なくペラペラと本のページを捲った。ボクはまだ声を聞いてへん。部屋にはページをめくる音とカチコチを時計が時間を刻む音が響いた。もうどれだけの時間が経ったやろか。窓の外はまだ雨降り続いとる。ボクが本のページを捲るのとほぼ同時にその子が初めて紡いだ言葉。


「死にたい」


か細い声で窓の外を見ながら、ただそれだけを呟いた


14.7.13



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