俺と寿一が入学した神奈川の箱根学園は自然に囲まれたとても綺麗な所だった。自転車に乗る環境にも、いい先輩にも恵まれて俺は高校生活が楽しくて仕方なかった。
入学と共に入部して1ヶ月が経った。新しい環境に身を置くと月日が流れるのはこんなにも早いらしい。彼女は俺が学校にも部活にも慣れてきた頃、部室のドアを叩いたんだ。

「集合!新しいマネージャーだ。紹介する。」
「1年の苗字名前です。色々とご迷惑をお掛けすると思いますがこれからよろしくお願いします。」

名前にはいまいちピンと来なかったが、ぺこりと下げられた頭にはなんとなく見覚えがあった。福富と新開、色々教えてやってくれ、という部長の声がぼんやりと耳に入った。
福富くん、と嬉しそうな声でこちらに駆け寄ってくる彼女。ああ、寿一と同じクラスの子か。だから見覚えがあったんだ。
「苗字、これから頼む。」
「こちらこそ。新開くんもよろしくね。」
「ああ、よろしく、苗字さん。」

俺がそっと手を差し出すと、小さくて白い手は嬉しそうに俺の手を握り返してくれた。裏表のなさそうないい子、だと思った。
よろしく、そう言いながらまだ幼さが残るその顔に浮かべた笑顔と柔らかい手の感触はなぜか俺の中に長く残っていた。


2014.9.8



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