わたしが寂しいと言えば御堂筋くんは嬉しそうな顔をする。寂しいと言えばその細い身体で強く抱きしめてくれる。悲しいと言えば大きな手のひらで私の頭を撫でてくれる。
寂しいのは当たり前だ。だってここは私の家ではないし知り合いも友達も誰一人居ない。でもこの空間が嫌では無いからわたしは御堂筋くんと出会っておかしくなってしまったのかもしれない。
わたしは御堂筋くんを起こさないようにそっと寝返りを打った。となりに寝ている御堂筋くんはわたしに背中を向けているからどんな寝顔なのかわからないし、ひょっとしたら私が気づいてないだけで本当は起きてるかもしれない。寂しさを埋めるように細いけど広い御堂筋くんの背中に額を擦りつけた。

「…名前ちゃん寝られへんの?」

やっぱり起きていた。ごろりと寝返りを打って私の方を剥いた御堂筋くんの大きな目がわたしを見つめる。月明かりだけで照らされる薄暗い部屋の中にぼんやりと浮かぶ目は少しだけ怖い。

「起きてたの」
「名前ちゃんが起きてくる気ィしてなぁ」
「すごいね、御堂筋くん。わたしの事なんでもわたっちゃうんだね」
「名前ちゃんの事やからわかるんやで。」
「わたしは御堂筋くんの事わかんないのになぁ…ずるいや」

また少し、寂しくなって布団の中でごそごそと自分の手を動かして御堂筋くんの手を探した。なかなか見つからなくてしょんぼりと眉を下げると何も言わずに御堂筋くんの骨ばった手がわたしの手を握った。
御堂筋くんはずるい。わたしは御堂筋くんの事を何も知らないのに御堂筋くんはわたしの事をなんでも知ってる。それがまた寂しいくて私はぎゅっと目をつぶって御堂筋くんの胸板に顔を押し付けた。もう片方の骨ばった細い指が生えた手はわたしの頭をぐっと引き寄せてくれた。

「御堂筋くんの誕生日は?」
「なんやの、急に」
「いいから」
「……1月31」

めんどくさい。声には出さないけど御堂筋くんの顔がそう言っている。わたしはそれを見なかったことにした

「身長は?」
「185」
「わぁ、すごいおっきいんだね。じゃあ好きな食べもの」
「鰻と豆腐」
「うーん…視力は?」
「2.0や」
「御堂筋くんは部活してるの?」
「…自転車や」
「自転車?」
「普通の自転車ちゃうで」
「どんなの?」
「ロードバイクっちゅうやつや」
「今度見せてほしいなぁ」
「今度な」

ぽつりぽつりと私が繰り出すどうでもいいような質問に御堂筋くんは嫌めんどくさそうな顔をしながらもちゃんと答えてくれる。不器用な彼の優しさを感じる。あやすようにぽんぽんと私の背中を叩く御堂筋くんの手に眠気を誘われてそっと目を閉じる。

「御堂筋くん、寂しいよ。」

寂しさはもう無かった。でもそう言えば御堂筋くんはよろこんでくれるから。目をとじる私の前で御堂筋くんはどんな顔をしていたんだろう


2014.8.30





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