2000年後の君へ


 

現パロ



「夏だ!」

「海だ!」

「水着だぁああ!」

「…バカじゃないの」


学生なら誰しも大好きな単語、夏休み。
そう!今日から夏休みなのです!短い午前だけの授業を済ませ、鞄には大量の宿題、進路希望調査、夏休み前に行ったテスト。憂鬱はたくさん詰まってるけどそんな事より夏休みだ!ライナーとベルトルトと共に夏休みという嬉しさを言葉にして叫ぶ。そんな私達を見て静かにため息を吐いてくだらないと漏らすアニ。


「なんでそんな事言うの〜アニちゃ〜ん」

「…名前、近い」

「私とアニちゃんの仲じゃないですか〜ほら、アニちゃんちゅ〜…んぶぇ」

「バカじゃないの、アンタ」


ふざけてアニに唇を近づけると鞄でガートされる。唇がほこりっぽい味になった…ぺっぺ。


「でもさ!私達もう3年じゃん!卒業だよ!?これから別々になっちゃうかもしれないし〜最後の夏休みくらい4人で思いっきり遊ぼう!色んな所いっぱい行こう!ね!」

「まぁ最後の夏休みだからこそうかうかしてられんがな。名前の言う通りだ。最後の夏休みくらい死ぬほど遊んだってバチは当たらんだろ。やることさえしっかりやればな。」

「名前とアニとライナーはどこに行きたい?僕は夏祭りに行きたいなぁ」

「海!海!うーみー!プールも!」

「いいな、海。花火大会も行きてぇな」

「花火大会!私アニとお揃いの浴衣ー!」

「ちょ、ちょっとアンタら何勝手に話進めて…」

「アニ、いいじゃないか。最後の夏休みくらい、みんなで思い出作っても」

「ベルトルト…アンタは名前に甘すぎなんだよ。」

「そういうアニもね。」

「ねー!ライナーが明日プール行こうって!アニもベルトルトもいいよねー?」

「うん、僕はいいよ」

「だから何勝手に…はぁ。名前、アンタには敵わないよ。」

「そんな事言いながらアニ、嬉しそうな顔してる。」

「………うるっさい」

「いったい!!」


アニの綺麗なキックがベルトルトの脛にヒットした。






「ライナー!ベルトルト!こっちー!」


私とアニは待ち合わせをして近所の市民プールまで一緒に来た。木陰で雑談をしているうちに前から長身コンビが歩いてくる。あっちーな、と言いながら歩くライナーの額にはうっすら汗が滲んでいて夏の暑さを彷彿とさせた。私はというとプールに早く入りたくてウズウズしてる。家から服の下に水着を着てくるほどのお用意周到ぶりである。アニには小学生じゃないんだから…と呆れられてしまった。


「ライナーベルトルトおはよう!」

「おう、家からここまで来るのにもう汗だくだ。早く行こうぜ」

「おはよう、名前。ライナーは暑がりだからね。とは言っても僕も早く入りたくてウズウズしてるんだ。」


へへ、と頬を掻きながら笑うベルトルトの額にもうっすら汗が滲んでいる。そりゃあ2人共背が高い分太陽に近いもんなぁ、暑いよなぁ…それに比べて私もアニも2人より頭3個分近く太陽から離れている。とはいえ背が低ければ低いで地面からの照り返しが辛いのだ。高くても低くても夏は暑いもんなぁ…
建物の中に入ると冷房が効いていて火照った体に冷たい風が気持ちいい。私はというと、早くあの冷たい水の中に入りたいという気持ちが先走り、ライナーとベルトルト待っているうちに木陰で膨らませた浮き輪を両手で抱えていた。子供か、とライナーに言われつつ料金を払い、急ぎ足で更衣室へと向かった。後で背中に日焼け止めでうんこって書いてやる。恥をかけ。


「アニ!早く早く!」

「わかったってば…私はアンタみたいに服の下に水着着るなんて小学生みたいな事してないんだからそんなに早く着替えられないの。」


まだ言うの、それ。もういいだろ…。私はアニが着替えているのを待ちつつビーチサンダル取り出しーのシュシュ取り出しーのビニール素材のバッグにお財布などを入れーのトツギーノ。あ、日焼け止めも入れなきゃ。私の準備が終わる頃、アニもちょうど水着に着替え終わったようだ。アニは黒いビキニと同じ色をしたサングラスを頭に乗せて水色のシュシュで髪をまとめている。私のシュシュもアニとお揃いのデザインのピンク。昨日の学校帰りに雑貨屋で買ってきたのだ!


「アニ、行こう!」


白くて綺麗なアニの手を取って私はプールへと急いだ。脱いで履くだけの男子組はもういるはずだ。


「ライナーベルトルトおまたせ〜」


私とアニがプールサイドへ向かった時、ライナーとベルトルトはレンタルのビーチパラソルとビニールシートを準備していた。売店も近くて場所も広い良いところだ。


「アニ〜日焼け止め塗り合いっこしよう〜」

「ん、背中は頼んだよ。」

「わぁいアニちゃんのすべすべで綺麗な背中〜!」

「やっぱりいい、触らないで」

「うわぁん!ごめんなさい塗らせてください!」

「名前、お前の背中に俺が塗ってやろうか?」

「わりと理由のある暴力を振るうぞ」

「ごめんなさい」

「名前、アニ、ライナーと売店に行ってくるけど何がいい?お昼食べてないだろ?」

「ブルーハワイのかき氷とフランクフルト!」

「名前と同じかき氷とアメリカンドッグ」

「ありがとう。お願いします〜その間に日焼け止め塗っとく!」

「変な男に気をつけろよ。」

「アニがいるから平気。」

「それもそうか」

「早く行きな筋肉ゴリラ」


しょんぼりしたライナーを慰めつつベルトルトとライナーが売店へと向かう。私はアニの背中に日焼け止めを塗ることにしよう。私は隣で腕に日焼け止めを塗ってるアニの後ろへと移動した。



「背中の紐解くよ〜」


はらり、と黒く細い紐を解くと真っ白で綺麗なアニの背中。たらりと手のひらに日焼け止めを垂らしてアニの背中に塗り広げた。アニの綺麗な肌が焼けてしまわないようにしっかりと塗らなきゃ。アニは細くて羨ましいな〜。自分のむにむにとしたお腹と太ももを見て落ち込んだ。
ライナーとベルトルトが買ってきてくれたかき氷とフランクフルトでお腹を満たし、ベルトルトの焼きそばを分けてもらい、麺が器官に入り込みむせて盛大にベルトルトの顔に焼きそばをぶっかけた。さあプールに入ろう!水の上に浮かべた浮き輪に腰を下ろした直後、仕返しと言わんばかりにベルトルトに浮き輪をひっくり返されわたしは着水後5秒でずぶ濡れになった。お前の背中にもうんこって書いておくべきだった。(ライナーの背中にはちゃんと日焼け止めで文字を書いておきました!)また浮き輪ひっくり返しずぶ濡れ事件が起こりかねないので浮き輪は荷物と一緒にビーチパラソルの下に置いて、私はライナーの背中に飛び乗った。


「進めー!」

「はは、特等席だね、名前」

「うん!アニもベルトルトの背中に乗ったら?」

「遠慮しとく。」


笑いを堪える私とライナー!あからさまに落ち込むベルトルト!
水が流れているプールや人工的に波を作るプール、ある程度堪能した私達はプールのメインともいえるウォータースライダーへとやってきたのだ!なんでもここのプールのウォータースライダーはこの辺りのプールでは一番高くて長いんだとか…


「ねー、せっかくだしペア決めて2人ずつ滑ろうよ。」

「もし俺とベルトルトが一緒になったらどうしてくれる」

「笑う」


じゃんけんでペアを決めた結果私はベルトルトと一緒に滑る事になった。ライナーよかったね。


「ねぇ待ってめっちゃ高い!!ちょっとまって高い!!」

「怖い?」

「ばばばっばバッカ!別に怖くねーし!」

「でも足震えてる」

「………うわーん!怖いよベルトルト〜!」

「よしよし、大丈夫だよ。僕が一緒に滑るからね」

「後ろからぎゅってして滑ってくれなきゃやだ〜〜!!」

「うんうん、しててあげる。ほら、僕達の番だよ」


おいで、とスライダーの縁に座ったベルトルトに手招きをされてその足の間にすっぽりと収まる。ベルトルトの胸板やお腹がぴったりとわたしの背中に当たってすっげー守られてる感ある。脇の下をくぐってベルトルトの長い腕がにゅっと伸びて私のお腹の前でクロスされ、ぎゅうっと抱きしめられる。私達の両側を流れる水が長い長い、先の見えないスライダーにどんどん飲み込まれていく。あああ、私達もこれからこの水と同じようにこのスライダーに飲み込まれていくんだ。名前いい?、というベルトルトの問いに私はぎこちなく頷いた。とん、と一瞬。ベルトルトがスライダーの縁を押すと私達2人の体はスライダーに飲み込まれていった。


「ベルっ、ベルトルト!もっと!もっとぎゅーって!」

「ええ、もっと?こ、こう?」

「そう?絶対離さないでああああああああ」

(名前の体柔らかくてかわいいなぁ)









「ぶえええ怖かったよおお」

「そんなに怖いならやめとけばよかったのに…」

「だってぇえ…アニは怖くなかったの?」

「別に。どっちかと言えばライナーの方が騒いでた」

「ビビったぜ…ウォータースライダーってあんなにスピード出るもんなんだな」

「ライナーデカいから余計スピード出たんだよ…ぶぇっくしょい!」

「名前大丈夫?そろそろ日も暮れてきたし帰ろうか?」

「んん、そうだねぇ…ライナーもベルトルトも焼けて肌真っ赤だし、そろそろ帰ろうかぁ」


私達は荷物をまとめてビーチパラソルとシートを返すと4人並んでプールサイドを歩き更衣室へと向かった。夏休みの初日、大好きな3人と過ごせてよかった。次はどこへ行こうかなぁ。長い長い夏休み。もっとたくさんこのメンバーで思い出作れたらいいな!
夕焼けに照らされながら歩く私達。ライナーの背中には日焼け止めで書かれた「ずっとなかよし」の文字が浮かび上がっていた。




2014.06.25



 

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