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short story


::婚活鬼

風間/過去拍手


「あくまでも血を絶やさぬためだ。それ以上でも以下でもない」



結納を済ませ祝言も挙げた夜、長い縁側で千景様は独り言のようにそう言っていたのをたまたま聞いてしまった。
まるで自身を慰めるように、誰かに誓うかのように発せられたそれはすぐに一人の女性を思い出させた。
京に行ったとき、出会った女性と言うにはあまりにもあどけない少女。
千景様は彼女を求めていた。
だが、その少女は北の地で想い人と共になったと知り、千景様は私を選ばれた。



「千景様、夏と言えど夜は冷えます。縁側などにいられては、体調を崩されますよ」

「なんだ、それはお前にも言える事だろう、大事な体だ、冷やすな」



立ち上がり私の肩を抱いて部屋へ入る千景様は少し微笑まれていて、それが私には悔しく、切なかった。
好いている方がいながら、私と契りを結び、そんな私の身を気遣って下さる。
例えそれが世継ぎのためだとしても、嬉しかった。
けれど、千景様の心には少女しかいないのだと思うと悔しかった。



「どうしたのだ」


「…いえ、なんでもありません。お慕いしております、千景様」






せめてこの想いに気づかないで




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