俺達が星月学園を卒業してから数年が経った。つまりそれは俺達が付き合うようになってからも数年経ったということになる。そして繰り返される4月19日、俺の誕生日…で、毎年むくれてるやつがここにいる。
「お誕生日おめでとう、一樹」 「ありがとう。…なぁ、前から思ってたんだが、何で毎年毎年俺の誕生日に不機嫌になるんだ?」 「べっ、別に?不機嫌なんかじゃないわよ?」
いや、あからさまだぞ。朝からなんかムスッとしてるし、言葉の一つ一つにトゲがあるし、しかもおめでとうの言葉が嫌々言ってやるって感じなんだけどな。
俺がそのままジッと見つめてると、バツが悪そうに話し出した。
「た、ただ、また置いてかれたなって思っただけ…よ」 「置いてかれたって、俺にか?」 「他に誰がいるのよっ?」
そう言うと少し怒ったようにそっぽを向いた。置いていく…俺が?お前を?
「…置いてかねーよ」 「一樹はそのつもり無くてもそうなの!ただでさえ一樹は一つ年上なのに、誕生日来たら余計に差が開くでしょう!?」 「…で、機嫌が悪かった、と?」 「そ、そうよ。悪かったわね、子供みたいな理由で。」
うん、確かに子供みたいだな、なんて素直に思ってしまった。 でもスゲー嬉しい…。お前が俺に置いていかれたくないって思ってくれてるのは純粋に嬉しい。
気がついたら俺は少し不機嫌な彼女を抱きしめていた。 ふわりと抱き寄せられる体からふわりとシャンプー甘い香りがする…
「置いてかねーよ」 「だから」 「置いてかないったら、置いてかないんだよ。全く、年の差なんか気にしやがって。」 「うっ、うるさいわよ!…そう言われると思って言わなかったの…」
抱き締められている、そんな状況で顔が真っ赤になってる。ヤバい、可愛い、離したくない。
「良いか、良く覚えとけ。俺はお前を置いておくどころか離さないつもりだぞ。例え何があろうとも、な。だからお前が離れたいっつってもずっとこのままだからな。覚悟しとけよ?」 「…うん」 「いい子だ」
力強く抱きしめると安心しきったように目を閉じる。ああ、俺はこれからもずっとこんな風にしてんだろうな。
つかんだその手は離さない
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