一人きりの寂しさはもうない、いつだって僕が隣にいるから*春鳥


誕生日は白い大きなケーキを買って、毎年一本ずつ立てるロウソクは増えていく。父さんと母さんが誕生日おめでとう一樹って笑ってくれて歌を歌ってくれる。大きくなってもずっとそれが続くんだと思ってた。だから両親が亡くなった次の年の誕生日は一日中泣いて過ごした。白いケーキも両親の笑い声も聞こえない誕生日は祝う気持ちになんてなれなかった。中学に入っても誕生日を教えるような友達は出来なかったから自然と誕生日を祝わない年が続いた。高校に入って4年目の春、自分が見つけた最高の仲間達に十数年振りに誕生日を祝わってもらった。驚きと嬉しさで少しだけ泣きそうになった。やっぱり誰かに誕生日を祝ってもらうことは幸せなことだということを思い出し、それからは仲間達の誕生日を盛大に祝っている。


「ぬいぬいの部屋は相変わらず何もないのだー」

「掃除が面倒だからな」


星月学園を卒業して一ヵ月半、今日は俺の誕生日だ。仲間の誕生日は盛大に祝うっという決まりは今も続いており、ついさっきまで俺の部屋で誕生日会が行われていた。月子は星型のクッション、颯斗は俺が欲しがっていた本、翼は発明品をプレゼントしてくれた。ちなみに翼がくれた発明品は起動させた途端ネジが吹っ飛んだ。


「プレゼントくらいまともに作れよな…」

「ぬー…俺の計算に狂いはなかったのだ…」

「じゃあなんで勝手に分解するんだ?」

「ぬぬぬ…」


幸い爆発はしなかったものの、吹っ飛んだネジが全体を支えていたらしく発明品は原型を留めないほどバラバラになってしまった。遅くなると危ないので月子を颯斗に送らせ、俺と翼はバラバラになってしまった発明品の片付けの最中だ。


「よし、これで部品は全部拾ったな」

「うぬ!大丈夫だと思うのだ!」

「お…っと、そろそろお前も出ないと門限に間に合わないぞ」


時計を確認するともうすぐ7時、門限は9時だからそろそろバスに乗らないと門限を過ぎてしまう。


「…ぬいぬい、」

「ん?」


くいっと服の裾を引かれたので振り返るとすぐ近くに翼の顔が見えた。キスされるなっと思ったときには既に唇は重なっていた。まったく…こいつはいつも突然キスをしてくるから俺ばっかりドキドキさせられているみたいで悔しい。それでもきっと、俺は一生翼には敵わないのだ。


「…門限は」

「今日は外泊許可取ってある」


つまりこいつは最初から俺の部屋に泊まるつもりでいたようだ。別に構わないけど。俺がふっと小さく笑って力を抜くと、翼に強く腕を引かれたちまちベットに連れ込まれた。卒業や進学やらで忙しかったから最後にしたのはもう二ヶ月近く前だ。


「ぬいぬい、大好きだぞ」

「ん…俺もだ」


絶え間なく注がれるキスの合間に囁かれる愛の言葉。嬉しくて気持ちよくて涙が止まらなくなった。


「生まれてきてくれてありがとう、俺を見つけてくれてありがとな、一樹」



一人きりの寂しさはもうない、いつだって僕が隣にいるから


これから先何年だって君に言うよ。生まれてきてくれてありがとう。俺を見つけてくれて本当にありがとう。ずっとずっと大好き!



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