短編 | ナノ

 Milk Tea




「蔵」



私が蔵の名前を口にすれば、クラス日誌を書いてた手を止めて、こちらを見てきょとんとした顔をする。

幼馴染の贔屓目で見んでも、蔵は抜群に格好えぇ。



「何や?音子」



優しい声音は、他の人に使われるもんとちゃうように思うのは希望的観測でしかないのに、自惚れてしまう。



「ミルクティー」

「は?」



訳がわからんと表情で語った蔵に少しばかり笑いが漏れる。

まぁ蔵にとって私はいつも訳わからん事言うてるんやろうけど。



「飲みたいんやったら、謙也に買って来さすで?」



蔵、それは優しさなんか?

つうか、謙也君、ホンマにゴメン。

私が違うと言う前から、包帯を巻いたその左手でメールを作ってるんは見て見ぬフリさせてもらうわ。



「ちゃうねん」

「え?ちゃうん?あ、もう送れてもうたわ」



やろうと思った。

蔵の突っ走りやすい癖は直させなあかんて本気で思うわ。



「で、何がミルクティーなん?」

「蔵」

「俺?」



せっかく綺麗な顔しとるんやから、間抜けな顔したらあかんやろって思とけど、ツッコまへんかった。

完璧やら聖書やら四天宝寺の王子様やら言われとる蔵がホンマに完璧なわけちゃうんやって、一番知っとるんは私やから。



「俺がなんでミルクティーになんねんな?」

「髪の色もやけど、なんて言うかな…お姉ちゃんの作ってくれる甘いミルクティーみたいやなって思ってん」



お姉ちゃんていうんは、私のお姉ちゃんやなくて、蔵のお姉ちゃん。

見目麗しい白石家の第一子で、完璧や言われとる蔵が頭のあがらへん人。

美人は怒ると迫力がちゃうんや。



「お姉のミルクティーなぁ…」



呟いた蔵の顔が何を思い出したんか、赤く染まっていく。



「アカンわ、それ…殺し文句やん」



ボソボソと呟いた蔵が、日誌を広げたままの机に突っ伏す。

いやいや、手を止めさせた私が言うことやないけど、早う日誌書こうや。

机に突っ伏しとる蔵の耳が赤いのが分かって、なんやこっちまで恥ずかしなってきた。

なんて思てたら、バタバタと廊下を走る音がして、ガラリと教室の戸が開いた。



「白石っ!いきなし、ミルクティー買って来いてなんやねん!!」



ごめんな、謙也君。

それ、めっさ私の所為やわ。

とは、言えず、ただお疲れ様と蔵の代わりにミルクティーを受け取ってお金を渡しておいた。




Milk Tea
(『お姉ちゃんのミルクティーがいっちゃん好きや!』それは幼き日の台詞)
write by 99/2009/10/07





金髪に近い薄い茶髪を表現する時に「ミルクティーみたいな髪色」と表現することがたまにあります。
そこから派生。
ホントは白石より不二の髪色の方が近い気もしますが。
まぁ白石の方がミルクティーみたいかなと思って白石にしたんですが。
甘くてほんわかと安心させる温かい的な意味です。



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