短編 | ナノ

 恋の予感




「音子ちゃん!傘持ってたやんな?」

「持ってるけど、それ貸したら、うちが「ホンマ!?貸りてくね!」



隣のクラスの幼馴染みがバタバタと入ってきたと思えば、うちの返答をしっかり聞かへんまま、うちの折り畳み傘を奪って逃走。

人の話を聞かへんのは、昔っからやし、ハチャメチャな性格とは裏腹に愛らしいという表現が似合う容姿をしとる彼女は異性にも同性にも人気があって、風邪でもひこうもんなら大変や。

それに比べ、うちは平々凡々を絵に描いたみたいな万人顔やし、性格は普通よりちょっとネガティブ。

比べるもんやないけど、幼馴染みとしては、比べてまう。



「大変やなぁ、黒井」

「あ、忍足くん」

「謙也でえぇで」

「じゃ遠慮なく謙也って呼ばせてもらうわ」



呆然と幼馴染みを見送っていたうちにいつの間に並んだんかクラスメイトの謙也が居って、驚いたけどそのまま話を続けた。

教室に居ってもしゃぁないから昇降口に向かってのろのろと歩き始める。



「謙也、部活は?」

「雨じゃコート使えへんからなぁ」

「そやね」



うちと並んで歩く謙也に視線を送る。

謙也って女の子に合わせて歩けるんや。と、どうでもえぇことを思う。

うちの勝手なイメージやけど、浪花のスピードスターていうくらいやから、ゆっくり歩く女の子に合わせて歩くんとかは苦手そうやなぁと思っとった。



「音子…」



謙也にいきなり名前を呼ばれて立ち止まる。

さっきまで名字やったやんな?



「…て呼んでもえぇ?」



立ち止まったうちを振り返ってそう言うた謙也は恥ずかしそうに頬を掻きながら視線を彷徨わす。



「あ、え、…うん」



なんて言うてえぇんかわからんくて、でも、断る理由もあらへんから、頷いた。

その瞬間、だんだんと俯いてきとった謙也の顔が上がってキラキラとした笑顔を向けられる。



「おおきにっ音子!」





恋の予感
(「音子、一緒に帰ろうや」(相合い傘やんな…!?))
write by 99/2009/10/01





謙也にキラキラした笑顔を向けられたい(ぇ)
絶対、犬耳が見えそうな罠(マテ)
自主休講(人はそれをサボりと言う)して、学校の図書館(資料館?)で書いてました。
相合い傘が書きたくて幼馴染みのくだりを書いたのに、絶対にいらなかった…。



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