短編 | ナノ

 プレゼントは君で



昨日のうちに上靴は部室に避難させたけぇ、靴箱を開けることなんせんと靴を履き変えて教室への廊下を急いだ。



「素晴らしきまでのシカトだねぇ」



ギャーギャー喧しい女どもを徹底無視して歩いとったら、聞き慣れた声が聞こえた。

振り向けば、音子が壁に背を預けて立っとった。

その背景で勘違いした女の声が更に大きいなる。



「音子」

「今日は1日避難するんでしょ?」

「あぁ」



スッと俺の横に並んで音子が歩き始める。

周りはそれを非難しとるようじゃった。



「部室?屋上?」

「今日は部室の方が危なくないじゃろ。やけ、幸村に部室の鍵借りてきた」

「妙に協力的だね」

「誕生日の苦しみわかっとる仲間じゃからの」

「成る程」



納得したんかいつも無表情に近い顔に僅かな笑みが浮かぶ。



「なぁ音子」

「なに?仁王君」

「俺、音子からのプレゼントじゃったら、受け取るんじゃけど?」



そう言うて、たっぷり2分弱。

音子の表情と行動が固まった。

聞き流しそびれたんやろう言葉に音子の顔が朱に染まり始めた。



「用意してないんじゃったら、名前呼びで構わん」



完全に歩みが止まってしもた音子を振り返って、顔を覗き込むみたいに様子を窺う。



「俺んこと、名前で呼びんしゃい?」



絶対に自分から許さん名前呼び。

それを知っとるから、音子の顔は困惑気味。



「音子?」

「あ…」

「あ?」

「っ後で部室行くから待ってろ!雅治」



まくし立てるみたいに一気に言うた音子は慌てて教室に入っていった。

そんな姿に頬が緩む。



「後が楽しみじゃのぅ」



決して人が良いとは言えんじゃろう笑みを口元に浮かべて、俺は笑った。




プレゼントは君で
(プレゼントと共に部室に現れるであろう音子が俺の彼女になるまであと少し)
Happy Birthday to Masaharu Nioh 2008
write by 99/2008/12/04




俺んこと、名前で呼びんしゃい?
とか、仁王に言われたいと思って書いてました。
いや、柳生に「名前で呼んでいただけませんか?」とか言われるのもイイと思います!
某お笑いネタでいくと「惚れてまうやろーっ!」ってことです(笑)



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