短編 | ナノ

 ありがとうの日




「ありがとう」



今日一日中言うてた言葉を音子に言われた。

一日中言われてた言葉やなくて、一日中言うてた言葉や。



「音子さん?」

「ん?」

「おめでとうやないん?」



そう問いかけると、ニィッと口端を上げる。

可愛らしいと一概には言い切れん表情やけれども、可愛らしいと思てしまうんは惚れた弱みか。



「だって、おめでとうなんて皆と同じ言葉で侑士を祝いたくないんだもの。それにね」



背伸びをして内緒話をするように口元に手を当てる音子に少し屈んで顔を近付けた。



「侑士のお母さんに産んでくれてありがとうと侑士に生まれてきて私に出会ってくれてありがとうって意味なの」



思わず、口元を隠すように手で覆った。

フフッと音子が笑う。

耳に息がかかった。



「侑士?」



固まったままの俺を不審に思たんか、音子が顔を覗き込んだ。



「や、」



自覚はしとる。

せやから、見んといてや…。





ありがとうの日
(「侑士、顔赤いよ」「わざわざ言わんでや」)
Happy birthday to Yuushi Oshitari 2008
write by 99/2008/10/15






B'/zのHappy birthdayを聞いてて思い浮かんだネタです。
一応、書いてる時点ではヒロインと忍足は友達以上恋人未満な感じでした。
お互い好きなんだけど、今更付き合うとか言い出せないみたいな(どんな)



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