◎ ぴー、いー、あーる、あい、おー、でぃー。
始めたのが自分なら、終わらせるのも自分であるべきだ。
目の前で涙を堪えちょる音子にそう思った。
付き合おうて言うたんは確かに俺じゃ。
それまではただのクラスメイトじゃった。
丸井と仲が良うて、嫉妬して、自分のモノにした。
好き以上に好きで、14年しか生きとらん俺には“愛してる”なん言えんくて、ただ好きだと繰り返した。
音子がはにかんで好きだと言う度に舞い上がっとった。
その結果が、これじゃ。
頬が不自然に赤い。
制服のスカートから覗く膝には大きい絆創膏。
ちゅうか、俺と付き合う前はそのスカートはもうちょい短かったじゃろ?
なんで、なんて解りきっとった。
「ごめっ…なさい……」
謝らんで。
俺が悪いんじゃから。
「のぅ」
もう傷付かんで欲しいんじゃ。
俺の所為じゃから。
「別れてくれん?」
「…………え?」
訳が分からんて顔をして見上げる音子を抱き締めたかった。
でも、出来んよ。
「俺と別れて?」
俺は笑えとる?
なぁ音子、俺はちゃんとお前さんに笑えとる?
「私…要らない?」
「要らん」
「そっか…」
俯く音子に、ただただ祈った。
頼むから泣かんで。
その、瞳に溜めた涙を流さんで。
「今までありがとうね、仁王君」
顔を上げた音子は疲労感の見えとるその顔に笑みを浮かべて笑た。
泣きそうな笑顔で。
「こちらこそ、ありがとう。黒井さん」
冷たい音がした。
黒井さん。
久しぶりに名字を呼んだ気がした。
「じゃ行くね」
振り返ることなく走り去る音子の背中はずっと前より小さくなった気がする。
その背中を見つめて、俺は涙を零した。
ただ、音子の幸せを祈って。
俺は幸せになれんでもいいんじゃ。
ただ、君だけは。
俺の所為で傷付いてしもた君だけは幸せになって…。
ぴー、いー、あーる、あい、おー、でぃー。(本当は俺が幸せにしてやりたかった)
write by 99/2008/06/18
悲恋でごめんなさい。
仁王は主人公を大好きすぎたんです。仁王と付き合ったことでファンから嫌がらせにあう主人公とそれになんとなく気付いてたけど初めて遭遇した仁王の話でした。
主人公は仁王の嘘に気付いてるのか、いないのか…?
タイトルはアルファベットです。
periodになるんですが、まぁピリオドですよ。
終わりってことです、はい。
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