短編 | ナノ

 プレゼント請求権



目の前で私が間食用に買ってきたポッキーがどんどんなくなっていく。



「で、どうよ?」

「どうって?」



その様が気になって、私のなのに我が物顔で消費していくブン太を見つめていたから、話なんて聞いてない。

むしろ、私はそんな話よりもブン太によって消費される私のポッキーの方が重要なの。



「聞いてねぇな、お前」

「私のポッキー食べといて、話聞かなかったくらいで怒らないで」



ムゥと頬を膨らませてみたが、自分でその様を想像して気持ち悪かったから即やめた。



「黒井、参謀に何渡すんじゃ?」

「蓮ちゃん?」

「誕生日だろぃ」



なるほど。

話はそれか。

隣のクラスの雅治とブン太が来たから何事かとは思ってたんだけどさ。



「去年と一緒じゃ怒るだろうしなー」



これは独り言だ。

ちなみに去年は見た目はボロボロだけど、味はまぁまぁの手作りケーキをプレゼントした。

優しい蓮ちゃんは完食してくれたんだ。

今年はまだ考えてなかった。

今日までの部活課題と宿題重なってた所為でそれどころじゃなかった。

何を欲しいかもよくわかんないしさ。



「お前あげちゃえば?」

「ブンちゃん、セクハラじゃよ、それ」

「ブンちゃん言うな」



ブン太の意見なんか無視だ、無視。

つか、中3の台詞じゃないよね、それ。



「黒井さーん」



クラスの子に呼ばれてそっちを見たら、教室の入り口に噂の人物がいた。

ブン太と雅治に視線を送れば、知らないと目線で返された。

ブン太は知らないかもしれないけど、雅治の笑顔は絶対なんか知ってる。



「ちょっくら、怒られてきますか」

「行ってらー」



ブン太に懐かしい送り出しをされた気がする。

あいつら、いつ自分の教室に帰る気だ。

心の中で悪態を吐いてたら、いつの間にか、蓮ちゃんの前にいた。



「おはよ、蓮ちゃん」

「あぁ」

「んで、おめでと」

「あぁ」



ぶっちゃけ頷いてるだけだよね、蓮ちゃん。

呼んだの蓮ちゃんなんだけど。

なんて、言えないヘタレな私。



「音子、少し付き合ってくれ」

「うん、いいよ」



二つ返事で蓮ちゃんの誘いに乗る。

断る理由はないし、普段は真面目に授業に出てるから、サボったところで響くものでもない。

それに言い訳は得意分野だし。



「蓮ちゃん、どこ行く?」

「部室が一番見つかりにくいだろう」

「じゃ男テニの部室で」

「行くぞ」



蓮ちゃんに手を引かれて、私は歩く。

昔から変わらない立ち位置だ。

母同士が仲が良い私達は蓮ちゃんが神奈川に来る前からの幼なじみだ。

いつも蓮ちゃんは私の手を引いて、いろんな所に連れて行ってくれた。



「鍵は?」

「俺が管理してるから平気だ」

「さっすが」



ニコリと笑えば、蓮ちゃんの口角も少し上がった。

密かに蓮ちゃんのこの表情が結構好きだったりする。

つけあがられちゃ困るから当人には内緒なんだけど。



「音子」

「はい」

「欲しいものがあるんだが」



欲しいもの?

蓮ちゃんが誕生日プレゼントを寄越せって言うのははじめてかもしれない。

しかも、当日に呼び出しかけてだ。



「あんまり高いのはやだよ?」

「高くはない。値段のつけようはないが」



物じゃないのかな?

蓮ちゃんを幼なじみに持ってるから分析力とか観察力とかに期待されるのはよくあるけど、私には全くもってそんな特技はない。

貞くんと蓮ちゃんが異常なんだと思う。



「何かわかんないけど、私からのプレゼントでいいんだよね?」

「あぁ。音子にしかできない」

「んじゃ、いいよ。言って?」



きょとんてして見上げれば、蓮ちゃんに抱き締められた。

これは、かなり驚きだ。



「蓮ちゃん?」

「早いとは思ったんだが、最近の丸井や仁王を見ていると余裕がなくてな。音子」



苦笑してる声で言われる言葉は抱き締められた身体を伝って聞こえてる。



「お前の未来をくれないか?」



プレゼント請求権
(頷いた瞬間雅治とブン太が乱入してきたのは言うまでもない)
Happy Birthday to Renji Yanagi 2008
write by 99/2008/06/05





急遽作成感が否めない柳BDでした。
補足しときます。
柳と幼なじみでちゃんと付き合ってたんですが、ブン太とか仁王とか仁王とか(ぇ?)が音子ちゃんと仲良しさんなのに焦ってプロポーズした話です。
とりあえず、柳おめでとー!!



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