短編 | ナノ

 甘えたがりクールボーイ



誰がそう決めたというわけやない。

ただ、俺がそう決めただけや。



「侑、何か飲むー?」



そう言うて彼女が自分用に取り出してんのは見慣れた缶ビール。



「ビール」

「こら、未成年」


コツリとジュースの缶を頭に当てられる。

ニマニマ笑う音子さんの手には、ビールの缶。

おっさんみたいなトコあるけど、別嬪さんやし、可愛ぇ。



「音子さん」

「で、今日はアトベくんか?ガクトくんか?」



出てくる俺以外の名前は俺がよぉ口にする名前。

4コ年上の音子さんは氷帝の大学に通っとる。

年上の所為か、俺はいつも愚痴を零してまう。

普段、伊達眼鏡で区切っとる世界を、音子さんには晒してまう。



「ん?」



答えを促すみたいに、抱きついた俺の髪を梳く。



「違いそうだね。ってことは試合かな?」



ビクリと肩が揺れてもうたんに、音子さんは気付いたやろう。

それでのうても、この人は聡いんやから。



「侑士ぃー?」

「なに?」



髪を梳いてた音子さんの手が、俺の頭を撫でるみたいに叩く。



「負けてもいいよ。敗者切り捨ての氷帝で負けは許されないって知ってるよ?でもさ、侑士は一回くらい負けときな」

「なんで?」



フフッて、笑う振動が伝わった。



「負けて学ぶことは、勝って学ぶことよりも多いから」



顔を上げて、音子さんを見やったら、にこやかに笑っとった。



「なぁ…」

「なに?」

「今日、泊まってもかまへん?」





甘えたがりクールボーイ
(明日に備えて、もうちょい甘えさせてや)
write by 99/2008/05/16






関西弁が愛しかー(何県民)
いや、普通に関西人ですけどね(苦笑)
むしろ、県民じゃなくて府民です。
おっしぃは年上キラーだと思うんだ、うん。
教育実習の先生なんかに本気で恋してりゃいいとか思うよ。



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