短編 | ナノ

 図書室の眠り姫

氷帝の図書室には暗黙の了解がある。

図書室内では眠れる委員長を起こすべからず。

なんでって、去年から図書委員長をやってる子が跡部の幼なじみだから。



「音子起きてー」

「ん?」



図書室のカウンターから死角になった一番奥の机。

そこに眠る人物に俺は躊躇いもせずに、揺さぶりながら声をかけた。



「音子ーっ」

「おやおや、慈郎くんではないか」



そう言っておどけた話し方をしたのは、氷帝の図書委員長(こないだは本の虫って言われてた)、黒井 音子ちゃん。

冒頭でも言った図書委員長はこの音子のこと。

俺と音子はクラス数の多い氷帝で奇跡的にも3年間同じクラスだから、仲が良い。



「あとべーが怒ってる」

「ほぉ景吾がねぇ」



腕を組んでうんうんと頷く姿が音子は似合う。



「で、景吾は何に怒ってるの?」

「俺が」

「ジロが?」

「部活出ないから」



そう言ったら、図書室に沈黙が降りた。

沈黙を破って、音子が吹き出す。



「ジロ、景吾が怒ってるのは部活を休んでることにじゃないよ」

「へ?」



ニッコリ笑って、音子が手招きする。

近寄ると、内緒話をするみたいに、俺の耳に手を当てて、音子は口元を俺の耳に寄せる。

音子の息が耳にかかって、くすぐったい。



「私がジロじゃないと起きないから」



拗ねてるのよ。

小さく付け足された言葉にクスリ笑って、ギュッと抱きついた。





図書室の眠り姫
(ホントは寝たフリして王子様を待ってるの)
write by 99/2008/05/16




ジロちゃん好きです。
ジロちゃんを起こすネタとか眠り王子とかはありきたりなんで、あえて逆にヒロインを眠り姫にしてみました。
ありきたりネタも好きなんで書くと思いますけどね、きっと。



prev|next

back

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -