短編 | ナノ

 掠めた唇の知る先は

ふわりふわりと浮き沈むシャボン玉に笑みを落とす。

屋上の入口の上にある貯水槽を見上げれば、青空をバックに白い白衣がはためく。

この学園で白い白衣を常に着ている人間など一人しかいない。



「チカちゃん先生、何してんの?」



声をかければ、貯水槽の向こう側から銀の髪が覗き、医療用の白い眼帯で片目を覆った長曾我部先生が顔を出す。

その手には縁日で売っているようなシャボン玉の愛らしい容器。



「音子こそ、部活始まってんぞ」

「委員会の当番だったの」

「じゃあ尚更早く行かねぇと、な。政宗に怒られんぞ」



予備動作もなく軽い様子で梯子も使わずに飛び降りた先生はどこを見ているのかよくわからない。



「伊達先生、私には甘いから。真田には恐いけど」

「お前政宗に気に入られてんだな」

「なに、チカちゃん先生、嫉妬ぉ?」



茶化すようにそう笑ったら、細められた澄んだ碧がこっちを向く。



「そうだな」

「は?」



先生の反応に驚いて茫然としていたら、近付いてきた先生にシャボン玉の容器を押し付けられた。



「宣戦布告な」



ニィッと口端を上げて悪人顔で笑った先生に思わず一歩後退ろうとしたけれど、それは叶わなかった。



「ぜってぇ落としてやるから覚悟しとけよ」






掠めた唇の知る先は
(覚悟もなにも、既に貴方に恋してる)
write by 99/2010/12/18






元親が先生だったなら、真面目に勉強してたと思う今日この頃。
屋上という設定が好きなわけですが、屋上の上がれる学校に通ったことがない。
中学は上がる場所さえ知らなんだが、高校は最上階の上に行く階段に立入禁止のロープが張ってありました。
まぁ高所恐怖症の私には無縁だったのですが。
いや、高校の時は部室の張り出しから身を乗り出したりしてましたね、はい。
うちの出身高校は校舎の立地が変だったので。
シャボン玉と屋上は仁王アイテムなんですが、アニキに使ってみた。
あ、政宗先生が部活の顧問で幸村がクラスメイトという裏設定。



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