お題 | ナノ

「嘘なんかついてない」(*忍足侑士)



赤ちゃんの時にした病気の後遺症で私は妊娠することができないのだそうだ。
生理は来る。
でも、それは私にとってはあまり意味のない現象である。
妊娠できないと知ったのは、初経が来た頃だ。


「侑士、ごめんね」

「なんで謝んねんな」

「だって…」


知っていた。
彼氏である侑士が実は子供好きだってことくらい。
いつか自分の持つ家族に夢を持っていることくらい。


「なぁ俺なちょこっとやけど安心しとんねん」

「え?」

「ほら子供でけたらな、子供に母親とられてまうやん。それまで俺の妻やったんが、いきなし母親やろ?んで、必然的に夫より子供優先やん?」

「うん」

「でも、お前とやったらそんな心配あらへんねん。確かに子供は嫌いやないけど、それ以上にお前が好きやから。永久的に俺はお前を独り占めできんねん。それって凄いことやと思わん?」


侑士の言葉に涙が溢れた。


「嘘なんかついてへんで?全部本音や」


あぁ私、この人を愛してよかった。



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