｢またいつものやつ？｣(乾貞治)

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ｺﾝｺﾝと窓ｶﾞﾗｽを叩く音に顔を上げた｡


｢やぁ｣


顔を上げた先､笑っているのかいないのか口元だけは笑みを浮かべているように見える乾がいた｡


｢今日も昼休みから家庭科室は開けるつもりかい？｣

｢うん｣

｢じゃぁ昼休みに訪ねさせてもらうよ｣

｢またいつものやつ？｣


私の問いかけに今度はわかりやすく口端が上がった｡
逆光眼鏡で目は見えはしないけれど､乾は意外と表情豊かだ｡
確実に手塚会長よりは｡


｢じゃまた｣

｢また｣


私は知らない｡
乾が作っているｼﾛﾓﾉがﾃﾆｽ部を恐怖に陥れているだなんて｡



(c)ひよこ屋

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