お題 | ナノ

空と雲、そして電線(不二周助)



ピロリロン


不思議な電子音が聞こえ、不二は振り返る。


「あれは…」


振り返った先、不二の知った顔がそこにはあった。


「確か手塚のクラスの…」


小さく呟いてそちらに一歩近付けば、今まで上を見上げて携帯を掲げていた青学のセーラー服に身を包んだ少女が不二を視界に入れた。


「不二くん、今帰り?」


随分遅いねー。と、笑う少女に不二もにこやかな笑みを浮かべる。


「空見てるみたいだったけど、何してたの?」

「空をね、撮ってたの」


少女は空を一瞥し、不二に微笑んだ。
ほら。と、不二に携帯のディスプレイを見せる。
そこには、空と雲と電線が写っていた。


「東京じゃ空だけってなかなか撮れないや」


少女の言葉には少し寂しさが混じっていた。



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