お題 | ナノ
もういいよ、だから、(解放してあげる)(忍足侑士)
「いつからや?」
校舎裏の地べたに座る私の前には冷たい表情をする侑士。 私が虐めを受けるようになったのは、侑士と付き合い始めてすぐのこと。 虐めって言っても、侑士のファンからの呼び出しと嫌がらせ程度。 そこまでは酷くなかった。 よりによって、激情したファンの子に突き飛ばされて殴られそうになった日に見つからなくても。
「なぁ聞いとんの?」
「侑士と、侑士と付き合ってすぐくらい」
「なんで言わんかったん?」
言えるハズない。 ただ視線を落として無言を貫いた。
「はぁ」
侑士の溜息がやけに大きく聞こえた。
「もうえぇわ」
「え?」
呆れたみたいな声音に何を言われたのかわからなかった。
「えぇわ。別れよ」
慌てて上げた視線の先の侑士はもう背中を向けていて、終わったんだと理解した。 私の返事も聞かずに、侑士は歩き出す。 その背中がだんだん歪んで、滲んで、見えなくなった。
(もうえぇよ、やから、解放したる)
私は侑士の最後の優しさにも気付けずに泣いていた。
(c)こなゆき
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