お題 | ナノ
思わず口にしかけたけど(財前光)
「先パーイ、えぇ加減、好きやて言うてくださいよー」
「しつこいで、財前光」
「先パイが言うてくれるんやったら、幾らでも通いますわ」
毎日毎日教室や部活に押しかけてきてそう言うんは男子テニス部の財前光や。 一つ下の財前は毎日飽きんのかウチに好きやと言えて言うてくる。 多分、忍足が漏らしたんやろ。 面白そうやいう理由で白石が言うたいう線も強ち否定でけへん。
「好きやて言うてくださいよ」
「知らんわ」
ホンマえぇ加減にして欲しいんはこっちや。 毎日毎日、心臓がぶっ壊れそうや。
「財前、毎日来とるけどなぁ、そんなウチに好きやて言わしたいん?中身なくてえぇんやったら、なんぼでも言うたるで」
今日はいつもと違う返しをしたる。
「中身も欲しいんスけど」
これは予想外の反応やった。 ウチが財前を好きやいうんを聞いて面白がっとるだけやと思てたからや。
「先パイんこと、好きッスよ。やから、先パイに好きやて言うて欲しいんスよ」
顔が赤くなるんが自分でもわかった。 せやから、財前に背を向ける。
「え?まだ言うてくれんのですか?」
いや、思わず口にしかけたんやけど…。 まだ、言うたらへん。
(c)こなゆき
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