お題 | ナノ

見返してやるんだから(跡部景吾)



今日も氷帝学園中等部男子テニス部のコートは賑やかである。


「まずい」


その一言を発したのは、200人もの部員を束ねる部長である跡部だ。
そして、その手には彼の目の前にいるマネージャーが作ったドリンクが握られている。


「最初に比べたら美味くなったぜ?」

「そやそや。なぁ岳人?」

「お、おぉ…」


フォローするように同じように彼女のドリンクを持ったレギュラーが口を開くが、彼女は肩を震わせていた。


「氷帝のレギュラーマネージャーがこんなんでいいわけねぇだろ?あーん」


そういつものように嘲笑った跡部はマネージャーに背を向ける。
樺地はマネージャーを気にしながらも、跡部の後ろに続いた。


「絶対…」


小さな呟きが落ちた。


「見返してやるんだからー!!」


跡部の背中に彼女の叫びがぶつけられる。
震えていたのは決して泣いていたわけではない。
彼女は怒りを抑えていたのだ。
それを知るレギュラーは全員その叫ぶ姿に苦笑を浮かべる。


「まぁ飲めなくはねぇな」


握ったまま持っていったドリンクに穏やかな顔をし、跡部がそう呟いたのは樺地しか知らない。



(c)こなゆき