お題 | ナノ

忘れモノは君(手塚国光)



ガチャリ

トイレから帰って、生徒会室の扉を開けた向こうには手塚会長がいた。


「どうしたんですか?」

「いや…」

「部活は終わられたんですか?」

「あぁ…」


珍しい。

手塚会長は部活が終わってから生徒会室に顔を出すことは少ない。


「忘れ物があったことを思い出したんだ」

「忘れ物ですか?珍しいですね」


そう言いつつ、鞄の中に筆記用具を入れる。

書類は既に書き終えた。

提出しなくちゃいけない原稿は手塚会長の机の上。

よし、帰ろう。

意気込んで、鞄を肩に掛けた。


「会長、お先に失礼します」


忘れ物を取りに来たというのなら、まだ帰らないんだろう。

なら、先に帰るしかない。


「俺も帰ろう」

「え?忘れ物は…?」


扉のところで並んだ手塚会長を見上げる。


「お前だ」


見上げた先、少し口端を上げて微笑んだ手塚会長。

顔が赤くなる。

勘違いしてしまう。


「さぁ帰ろう」




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