お題 | ナノ

余裕なんてこれっぽっちも、(忍足侑士)



「忍足だったらさ、あれだよね」


お菓子を机に広げた彼女は頬杖をついたまま、俺を見上げる。


「あれってなんやな」


呆れた感じで返したら、彼女は持っていたポッキーを俺に突きつけた。


「好きな子が出来ても余裕で恋人になるまでを楽しんでそう」


こいつの目にはそう見えとるみたいや。

実際んとこ、心臓はバクバクやし、何話たらえぇかわからんよぉなる俺の気持ちなん全然知らんのやろ。


「余裕なんてこれっぽっちも、あらへんよ」

「へ?」

「心臓バクバクやで、今」


好きな子に少しでも好かれたいから、余裕なんか一個もあらへん。

そんな現状。



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