お題 | ナノ

見当たらないあの日の僕(切原赤也)


負けたくない。

ずっとそう思っていた。

もう勝ちしかないって。

勝利があの人たちに近付ける手段でしかなかった。


「赤也っ止めろ!!」


柳先輩の声にハッとして気が付けば、俺の前に跪くようにうずくまる先輩がいた。


「…先……輩……?」

「赤也、何をしてる!」

「早く保健室に」


ラフプレイはしないって、先輩と誓った筈なのに。

俺、何して…。


「っ赤也、わ、たしは、だ、いじょーぶ、だ、から…ね?」


真田副部長が先輩を抱えて、保健室に連れて行った。

見えないんです。

強くなりたかっただけ。

傷付けたいなんて思ってない。

ただ、見えない。

誓った筈なのに。

あの日の俺は、どこにいますか…?



(c)A.M 0:00