お題 | ナノ

相づち中心の会話[切原赤也]



へぇ。うん。そうだね。


さっきから俺が話してる30分の間に先輩から出た言葉はこのみっつだった。
先輩じゃなかったら、「なんだよ、こいつ。態度悪ぃな」で、友人関係さえ断固拒否だ。


「どうしたの?赤也くん」


急に黙り込んだ所為か、先輩が俺の顔を覗き込む。
顔が近くて、ちょっとビビる。
せっかく、先輩と一番仲がいいっていう仁王先輩に頼み込んで、こうやって話せるようになったのに。


「赤也くん?」

「あの、先輩」

「うん」

「俺と居てもつまんないんスか?」

「え…?」


近いままの先輩の顔が驚きに歪んだ。


「俺ばっか話してて、先輩は相づちばっかで…」

「ゴメンね、赤也くん。あの、そのね、…聞きたかっただけなの」


今度は俺が驚きに顔を歪める。


「赤也くんの話が聞きたくて。嫌な思いをしたなら、ゴメンね?」


相づち中心の会話
(私は、あなたを聞きたい)
(c)ひよこ屋