お題 | ナノ

水玉がお気に入り[一氏ユウジ]



「やばっ降り出したやんけ」


家まではまだある。
降り出した雨はキツなる一方。
とりあえず、バタバタと近くにあった商店の軒下に避難する。


「夕立やし、やむまで待つしかあらへんな」


こんな時に限って、小春やらと帰らんかった自分を恨む。
一人やとつまらん。
生憎、今日はiPodも持ってへん。


「あの…」

(ついてへんわー)

「あのっ!」

「はっ?え?俺?」

「はい」


声をかけてきた女の子はどっか申し訳なさそうな顔をしとる。
まさか俺やとは思てへんかったんや。


「良かったら、使てください」

「え?えぇの?」

「はい」


差し出されたんは、タオルとビニール傘。
これ、百均やなくて、コンビニのちょこっと高いやつや。


「ウチ、そこなんで」


そう言うんが早いか、彼女はニコッて笑た後、ちょっと古風な水玉模様のスカートを翻して全力で走り出した。


「え、ちょ、は…?」


残されたんは俺と傘とタオル。


「ヤバい、ちょっと可愛かった…」


水玉がお気に入り
(リズミカルに身につけて)
(c)ひよこ屋