お題 | ナノ

照れると黙りこむ[石田銀]



「ふへ?」


この奇妙な声を出してもうたんは私や。
いつも通り、お弁当を食べてたら、友達に訊かれた質問に思わず出てしもたんや。


「やぁかぁらぁー、好きなタイプ!」

「イケメン揃いのテニス部のマネジやろ?あんた」

「イケメンて誰が…?」


思たら、これがスイッチやったんや。


「誰て言うたで、この子」

「誰ってレギュラーに決まっとるやん!」


声大きいてハズいわ。


「愛らしい容姿と人懐っこい金太郎くんに」


金ちゃんは可愛えよな、うん。
人懐っこいし。


「クールな見た目に今流行りなツンデレの財前くん」


財前は呆れ顔しか出てこぉへんねんけど、ツンデレてアイツいつデレてんねん。


「ヘタレやけど男女誰にも優しいし、見た目も文句なし、おとんは医者のサラブレッドな謙也。ヘタレやけど」


ヘタレて二回言うたで、この人!


「四天宝寺が誇るお笑いコンビも人気は高いで!」

「目つきはキツいし、イマイチ本もんかネタなんかわからんけど、小春ちゃんの話さえせんかったらえぇ男やし、後輩からの人気は熱い一氏に」

「四天宝寺の頭脳、頭の良さから憧れる女は数知れず、女心のわかる小春ちゃん」


うん、一氏て小春の話さえ出さんかったら普通ん奴やもんな。
小春はそこらの女の子より女子力あるし、納得や。


「極めつけは部長の白石やな」

「王子やもんな、白石」


王子て、アレがか?
えくすたしーとか言うで、あれ。
えくすたしーが王子とかえぇの?


「優しいし」

「格好えぇし」

「偉ぶらんし」

「「まさに四天宝寺の王子…!」」


声揃ったで。
優しいんも顔がえぇのも(たまに部長命令とかしよるけど)偉ぶらんのも、まぁ同意はできる。
でも、えくすたしーやで。
私はムリや、えくすたしーとか。


「イケメン揃いやんか、テニス部」

「で、誰がタイプなん?なぁ!」

「師範て大人っぽうて格好えぇよね」


私のその一言で空気が固まった。


「師範…?」

「て、石田くんやんな?」


コクンて頷いた。


「うん。いっちゃん常識人やし、私は師範がえぇな」


友達の視線が私の後ろをさまようてる。
嫌な予感がして後ろ向いたら、案の定、テニス部レギュラーご一行。



「あ、え、あ…」


ニヤニヤ笑てるテニス部と黙り込んだまんまの師範に気まずい。


照れると黙りこむ
(顔色一つ変えないけれど)
(c)ひよこ屋