お題 | ナノ

スーパーマンになりたい(鳳長太郎)



『長太郎、何、泣いてるの?またイジメられた?私が仕返ししてあげる!』


子供の頃からずっと一緒だった彼女は気が弱くよく泣いていた俺をよく守ってくれていた。

普通は逆なんだろう。

けれど、その頃の俺達には何の違和感もなく、彼女が俺を守り、俺が彼女に守られていたことは至極当然のようなものだった。

しかしながら、中学に上がり、身長が伸びた所為とそれなりに内面も成長した俺は今や簡単に泣くことはなくなり、勿論、イジメられるということなど皆無だった。

彼女はというと、あの頃、よく見ていた背中はとても大きかったように思えるのに、今は俺よりも数十cm小さく愛らしいという表現の似合う少女だ。

昔のやんちゃな面影はなく、学年でもそこそこ美少女として有名らしい。


「………長太…郎……」


なのに、何故、彼女がこんな目にあっているのだろうか。

見られたくなかったとでも言うように彼女は視線をさまよわせる。

傷だらけの彼女を体育倉庫近くの人気のない場所で発見したのはつい先ほどの出来事だ。


「いつから?」

「………」

「いつから、こんなこと」

「っ今日がはじめてだよ!」


だから、平気だと彼女は笑ったが、俺は彼女の傷付いた腕を掴んで、無理やり目線を合わせた。


「長太郎」

「俺が守るから、今度は俺が君を守るから」


だから、教えて。

どんな些細なことでもいい。

君を守れるスーパーマンになりたいんだ。



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