お題 | ナノ

ひんやりと風がゆく(切原赤也)



雨の次の日の部活。
珍しく自由参加にも関わらず、結局、部活(テニス)大好きな俺達レギュラーは全員が参加していた。


「好きだなぁ」


マネージャーの零した言葉に俺は固まった。
その目線が向けられる方を反射的に見る。
そこには、仁王先輩と打ち合う柳生先輩がいた。


「アンタ、柳生先輩のこと好きなの?」


そう言った俺にきょとんとした表情を浮かべるマネージャー。


「柳生先輩?何の話?」

「今、好きだなぁって」


眉間に皺を寄せた彼女はあぁと納得したような表情に変わる。


「柳生先輩じゃないよ。テニスがね、好きだなぁって」


否定された言葉が嬉しかったのか、自分が好きなテニスを好きだという彼女が嬉しかったのか、俺の火照った体に雨後独特のひんやりとした風が吹いた。



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