お題 | ナノ

焼けつくような午後(忍足侑士)



夏の日差しが燦々と降り注ぐ中、我が氷帝学園硬式男子テニス部は今日も部活がある。
というものの、普段は日曜日に部活はないのだから、半日だけになった。


「なんやもう来てたんかいな」


聞き慣れた低い関西弁に振り向けば、第二ボタンまで開いている制服をバサバサと風を送る忍足がいた。


「ネット張らなきゃいけないし。にしても、暑いねー」

「ホンマあっついわ」

「部室のクーラー電源入れてあるから」

「おおきに」


そのまま部室に向かうと思ってネットを張ろうと背を向ける。
けれど、忍足が去る様子はない。


「どうかした?」

「いや、一緒に部室行かん?」


私のTシャツの裾を少し摘んで言う忍足に顔が火照る。
焼けつくような暑さの中、私達の夏は始まる。



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