お題 | ナノ

真っ赤なトマトの実(柳生比呂士)



「比っ呂士くーん」


インターフォンを使わずに、お隣の比呂士くんを呼ぶ。
小学生の頃はよく遊んだのに、中学に上がってからは部活が忙しいから会うことさえ稀だ。


「どうしたんですか?」


玄関を開けてすぐに比呂士くんの丁寧な物言いが聞こえた。


「うちのプランターでトマトが出来たから比呂士くんのトコにもお裾分け!」

「ありがとうございます。おや、土が付いていますよ」


そう言って、近くまで来ていた比呂士くんは私の頬を少しだけ擦った。
フッと比呂士くんの顔に微笑みが浮かぶ。


「アナタもトマトの様ですね」





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