無意味の意味を欲すれば

年も明けて、無事に数えで三つになりました。
私の死亡フラグはおろか、梵天丸が生まれてくる気配がないんですが、これはかなり年の離れた兄弟になるんですか?
出会ってからこっち、綱元さんが傅役というか、世話役のようになりました。
あれ?傅役って世話役って意味でしたっけ?
教育係とかそういう意味だったと思ったんですが。


「栄丸様」


そういえば、最初から本性丸出しで話してしまったので、綱元さんとは素でお喋りできるので気が楽です。
何となく、私が普通じゃないのはわかってるんだろうけど、何も聞かずにいてくれる綱元さんは優しいです。
ただ、綱元って呼ばないと怒られますけど。
あと、輝宗様を父上って言うように言われました。


「はい、なんでしょう?」

「今日も朝餉は少ししか召し上がらなかったようですね」


困ったような溜息交じり。
実際の戦国時代には有り得ない植物事情のお陰でご飯は美味しいんですけど、流石に毒入りは食べたくないんです。
なんて、綱元さんには言えないけど。
言わなくちゃいけないのはわかってますけどね。
言ったら、その場で毒見し兼ねんのだもの、綱元さんってば。
どうしてかこの身体、毒に少しばかり耐性があるようで、舌がピリピリするかなとか変な味がするなと思ったら食べないことにしてます。
全部食べきって、アイツ死なないじゃんってなっても問題だもんねぇ。
私の食べる物に対して毒見はついてないわけじゃないだろうけど、その毒見役が私を嫌ってるみたいで、うわぁな状況。
でも、少し前までは毒なんてこんな頻繁に入ってなかったのに、何か私を消さなきゃと思うようなことでも起こったのかな。


「つなもと、しろでなにかありましたか?」

「何かとは?」

「その」


と言いかけて、思い当たる。
私が知らないだけで、梵天丸が生まれたとしたら、私は邪魔になって消そうとする人間が出てきてもおかしくないんじゃないか?
ハテナを浮かべる綱元さんに向きなおして、姿勢を正す。


「もしかして、よ、ははうえがごかいにんされましたか?」


義姫様と言いかけたけれど、ちゃんと言い直したのでご愛嬌。
それよりも気になるのは綱元さんの反応です。
ギクリというか非常に都合の悪そうなお顔ですね。
お目出度いことでここまでの顔をするってことは、輝宗様から私に対する緘口令でも出てるのかな。


「そうですか。ぶじにうまれてくれるといいんですが」


心からそう思う。


「栄丸様?」


不審というよりも不思議だというような顔をしている綱元さんに少しばかりの笑顔を向ける。


「つなもとにひとつおもしろいことをおしえましょう。うまれてくるのはおのごで、ちちうえはそのこにぼんてんまるとなづけるでしょう。けだかくつよいりゅうになるべくしてうまれてくる。かれが、だてのちゃくなんです」


綱元さんが息を詰める。
気味の悪い予言だろう。
でも、私は確信している。
早く生まれておいでなさい、梵天丸。



無意味の意味を欲すれば
テーマ・ファンタジー「タイトル:無題」(c)ARIA
write by 99/2010/10/28
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